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住宅設計海外の住宅間取り

2024.04.12

「マレーシアの住宅探訪」伝統とモダンの融合する住宅の多様性

「マレーシアの住宅探訪」
伝統とモダンの融合する住宅の多様性

 

今回は成長著しいASEAN地域(インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど)から、2023年、住宅不動産市場において安定的な成長を示しているマレーシア(前年同期比1.3%増、取引額ベースで3.5%増)の住宅事情について取り上げます。
マレーシアは、多様性に富んだ文化と美しい自然が広がる国です。
この国の住宅事情は、近年の急速な発展と歴史的な要素が交錯し、多様な住宅スタイルが共存しています。
このブログでは、マレーシアの住宅事情に焦点を当て、その多様性に富んだ住宅の種類と特徴について詳しく見ていきます。

(1)多様なマレーシア 住宅の種類

マレーシアの住宅の種類を見ると、多様であり、それぞれに魅力的なところが特徴と言えます。
マレーシアの住宅事情は、近年の急速な発展と歴史的な要素が交錯し、様々な住宅スタイルが共存しています。
都市部では高層ビルや近代的な住宅コンプレックス(住宅複合施設)が増加しており、一方、郊外や田園地帯では伝統的な家屋が見られます。
伝統的な住宅では、「高床式住宅」や「ショップハウス」、一般的な住宅では「テラスハウス」や「バンガロー」、そして日本のマンションに相当する「コンドミニアム」など、様々な様式や種類があります。それぞれ見ていきましょう。

1.高床式住宅

マレーシアの高床式住宅は、伝統的なマレー文化に根ざした建築様式の一つです。
木材を使って建てられ、地面から1mほど床を高くした位置に建てられます。
これは、洪水や湿地帯などの自然災害から住宅を保護するためで、
雨や湿気に強く、涼しい風が抜けるのが特徴です。

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Traditional rural residence with palm tree, village on Penang Island, Malaysia

 

2.ショップハウス

ショップハウスとは、1階が店舗、2階以上が住居となっている商業建築様式です。
マレーシアの都市部を中心に多く見られ、街並みの特徴の一つとなっています。
特徴は、イギリス植民地時代に間口によって課税されていたため、間口が狭く、奥行が長いと構造です。
近年では、ショップハウスは改修され、おしゃれなカフェ、レストラン、雑貨店、宿泊施設に様変わりしているところも多く見られます。
このショップハウスという建築様式は、高床式住居と合わせて、マレーシアの歴史と文化を感じることのできる要素の一つと言えるでしょう。


3.テラスハウス(リンクハウス)

テラスハウスは、マレーシアで最も一般的な住宅形態であり、日本風に言うと長屋で、同じ低層の住居形式が隣接し、ずらりと連なっています。
これも、イギリスが統治していた頃に広まった住宅形式です。
特徴は2階建ての構造で、同じような外観をもち、通常は前庭と後ろの小さな庭を持っています。

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4.セミデタッチドハウス

セミデタッチドハウスとは、2つの住宅が隣り合って建てられた住宅様式です。
テラスハウスと似ていますが、共有する壁が1つだけなので、テラスハウスよりも独立性が高く広い敷地を確保しています。
一般的には、それぞれの住宅が独自の庭を持ち、外観はテラスハウスと似ていますが、隣接する住宅との一部が共有されることがあります。

5.バンガロー

バンガローは、土地付きの一戸建て住宅です。他の住宅と接しておらず、独立した建物となっています。広い庭やプール付きのバンガローもあり、高級住宅として人気があります。
また、高級住宅地や郊外に位置することが一般的で、一階建てまたは複数階建てで、広々とした居住スペースや大きな庭園を持っています。


6.コンドミニアム

日本で言うマンションに相当する高層集合住宅がコンドミニアムです。都市部を中心に多く見られ、外国人居住者にも人気の高い住居形式です。
特徴は10階以上の建物であり、バルコニー、プール、ジム、サウナ、バーベキューエリアなど共有のアメニティが付属しています。
また、24時間警備やCCTV監視などセキュリティも高く、快適な生活を求める人にとっては魅力的な選択肢と言えます。

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(2)マレーシアのコンドミニアムの間取りの特徴

ここではマレーシアのコンドミニアムの間取りの特徴を解説します。

マレーシアのコンドミニアムの間取り図

 

1.玄関を入るとすぐキッチン

玄関を入るとダイニングキッチン、もしくはリビングがあり、奥の廊下沿いに各寝室、バスルーム(トイレ)があることが多くあります。

2.玄関ドアは内側開き

日本の玄関ドアは外開きですが、マレーシアは内開き(欧米も同様)です。
欧米式は、防犯上の観点から侵入者を阻止するのに有利な内開きが主流ですが、日本の場合は玄関で靴を脱ぐため内開き仕様です。
コンドミニアムを借りた場合、日本人にとっては少し不便かもしれません。

3.リビングとダイニングとキッチンが一体

リビング、ダイニング、キッチンはオープンで一体型の間取りが主流です。
家族とのコミュニケーションを重視するため、料理をしながらでも家族と会話できるように設計されています。

4.寝室の数と配置

マレーシアの一戸建て住宅には複数の寝室があります。一般的には親の寝室と子供の寝室があり、時にはゲストルームも用意されます。
寝室は通常、プライバシーを重視して配置され、リビングエリアから離れた場所に配置されることがあります。
マレーシアでは、マスターベッドルーム(主寝室)の面積を優先し、一番奥に配置されるケースが多くあります。


5.トイレは2つあるがバスタブがない

トイレは、家族専用とトイレとゲスト用のトイレが用意されています。
また、マレーシアでは湯船に浸かる習慣がなく、バスタブがなく、シャワーのみが備えられたバスルームが一般的です。
マレーシアの住宅の多くは、スペースを節約し、シャワーのほうが実用的であると考えられ、さらに熱帯気候が影響し、日常的にシャワーを浴びることが習慣化されているからです。

まとめ

マレーシアの住宅事情は、多様性に富み、急速な都市化と歴史的な背景が見事に融合しています。伝統的な高床式住宅やショップハウスから、モダンなコンドミニアムまで、様々な住宅スタイルが存在し、それぞれの特徴が魅力的です
マレーシアの住宅は、その多様性と快適さによって、国内外の人々から高い支持を得ています。

 


参考: