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住宅設計海外の住宅間取り

2024.07.12

「イタリアの住宅探訪」自然を身近に感じる庭と一体になった暮らし

「イタリアの住宅探訪」
自然を身近に感じる庭と一体になった暮らし

イタリアの住宅といえば、どんなイメージを思い浮かべますか?
石造りの重厚な建物、美しい中庭、そして家族が集う温かな空間。
地中海に面したイタリアは、独特の建築様式と文化を持つ国です。
今回のブログ記事では、イタリアの住宅事情と間取りの特徴について詳しく掘り下げていきます。
最初に、持ち家率が高いイタリアの住宅市場の現状や成長傾向、環境に配慮した国の政策について触れ、次に、石造りや土足文化、庭に面した設計など、イタリア独特の住宅の特徴を紹介します。
これらの内容を通じて、イタリアの住まいの魅力を理解し、ご自分のライフスタイルに合った住まいの参考にしていただければ幸いです。

 

(1)イタリアの住宅事情

イタリアは持ち家率が約70%と欧州の中でも高いのが特徴です。
イタリアの住宅市場は現在、成長傾向にあり、2024年から2029年にかけての年平均成長率は5%以上と予測されています。
また、イタリアでは、高級で広々とした住宅需要が高まりを見せ、都市部や小さな町では、より良い暮らしを求める傾向が見られます。
特に、高級住宅需要は2019年以降、50%近く上昇しており、現代の生活の要件を満たしている住宅への関心が高まっているようです。

また、国の環境に配慮した住宅政策欧州グリーン住宅政策により、イタリアを含むEU加盟国は、建物のエネルギー効率向上を推進しています。
2028年からは新築建物のゼロエミッション化が義務付けられ、2030年までに平均エネルギー消費量を16%削減することが求められています。
これにより、イタリアでは環境に配慮した住宅の需要が今後さらに高まると予想されます。

ゼロエミッション化:
建物の運用やエネルギー使用による二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすること。

(2)イタリアの住宅の間取りの特徴

アパートメントイタリアの都市部では、アパートメントが一般的な住居形態です。
多くのアパートは古い建物を改装したものが多く、築300年以上の建物も珍しくありません。
内部は現代的に改装されており、家具付きの物件も多く見られます。
典型的な間取りは、リビング、ダイニングルーム、キッチン、1~2つの寝室、バスルームとなっています。

また、戸建て住宅は、郊外や田舎が一般的です。
イタリアの戸建て住宅は、地域の伝統的な建築様式を反映しており、石造りや煉瓦造りの外観が特徴となっています。

下図は郊外の一戸建て住宅の間取りです。
1階にリビングルーム、ダイニングルーム、キッチン、2つの寝室とバスルームがあり、外庭がある事例です。

イタリアの住宅の間取り

※上図は『美食の国イタリアの間取り』を参考に作成しました。
イタリア住宅の特徴を見ていきましょう。

1.石造りが多い

イタリアの住宅は、石造りが一般的です。特に古い建物では、厚みのある石壁が使われており、耐久性や断熱性に優れています。石造りの住宅は夏は涼しく、冬は暖かいため、快適な居住環境を提供します。また、歴史的な建築物としての魅力もあり、景観に調和した美しい街並みを形成しています。

2.土足文化なので、玄関がない

イタリアでは、土足で室内を歩く文化が一般的です。
そのため、日本のような玄関スペースがなく、靴を脱ぐ習慣もありません。
家の入り口からすぐにリビングや廊下に繋がっており、靴を履いたまま自由に移動できるようになっています。
この文化的な違いが、イタリア独特の生活スタイルを象徴しています。

3.すべての部屋が庭から直接出入りできる

イタリアの住宅では、中庭や庭に面して全ての部屋から直接出入りできる設計が多くあります。
これにより、室内と屋外の行き来がスムーズになり、自然光や風通しを取り入れやすくなります。
家族や友人と庭で過ごす時間が多く、アウトドアリビングの感覚を味わえるのも特徴です。
庭はリラックスや社交の場としても活用されています。

4.バスルームはトイレ・風呂一体型、窓付きが主流

イタリアのバスルームは、トイレと風呂が一体となったデザインが一般的です。
また、窓が付いていることが多く、換気や自然光の取り入れがしやすいように設計されています。
この一体型バスルームはスペースの有効利用が可能で、清掃も容易です。
窓付きのバスルームは、カビの発生を防ぎ、清潔な環境を保つのに役立ちます。

5.床がタイル張り

イタリアの住宅では、床材としてタイルが多用されています。
タイル張りの床は耐久性が高く、掃除もしやすいため、衛生的です。
また、夏の暑い気候に適しており、室内を涼しく保つ効果があります。タイルはデザインも豊富で、色や模様によって部屋の雰囲気を自在に変えることができます。
タイル床は、イタリアの美しいインテリアの一部となっています。


6.キッチンダイニングが主役

イタリアの住宅では、キッチンダイニングが家の中心的な役割を果たします。
家族や友人と食事を楽しむ時間を大切にする文化があり、広々としたキッチンとダイニングエリアが設けられています。
オープンキッチンのスタイルも多く、調理中も会話が楽しめる設計です。
キッチンダイニングは、家庭の絆を深める重要なスペースとなっています。


7.バーゴラがある

バーゴラとは、庭やテラスに設けられた柱と梁で構成される構造物で、ブドウやツタを絡ませるためのものです。
イタリアの住宅には、このバーゴラ(Pergola)が設置されていることが多くあります。
バーゴラは自然の日陰ができ、夏の強い日差しを和らげる効果があります。また、家族や友人とアウトドアで食事や休息を楽しむための快適なスペースとしても利用されます。
バーゴラは美観と実用性を兼ね備えたエレメントで、イタリアのライフスタイルに深く根付いています。


まとめ


イタリアの住宅事情と間取りの特徴を掘り下げてきました。
イタリアの住まいは、石造りの耐久性や独特の土足文化、そして庭との一体感が特徴です。
また、環境に配慮した住宅政策の進展も見逃せません。これらの要素が融合し、イタリアの住宅は快適さと美しさ、そして持続可能性を兼ね備えた理想的な居住環境を提供しています。
この記事を通して、イタリアの住まいの魅力を少しでも理解していただければ幸いです。

参考