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住宅設計消防白書耐火構造

2023.11.09

【最新データで探る】火災から家と人命を守るための5つのポイント

【最新データで探る】火災から家と人命を守るための5つのポイント

「火災から家と人命を守るために何ができるのか?」。今回は、この疑問を持つ多くの人々に向けて、最新の火災による被害や死者数についてのデータから、効果的な対策を紹介します。
消防白書によると、火災による死者数はほぼ横ばい傾向にあり、これは悲しい現実であり、その死因は火傷や一酸化炭素中毒などが主な内容となっています。
しかし、火災による家屋や人命は、それぞれの住宅環境の整備や火災に対する行動によって、もっと減少させることができるはずです。
この記事では、火災から家と人命を守るための5つの重要なポイントを紹介し、また、省令準耐火構造についても解説します。

(1)住宅火災の現況と動向-消防白書より

2022年(令和4年)版の「消防白書」の「住宅火災の件数及び死者数の推移(放火自殺者等を除く。)」によると、令和3年の住宅火災は10,243件数とななっており、グラフを見る限り、全体的には減少傾向にあると言えるでしょう。
また、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)については966人と、ほぼ横這い状態が続いています。
火災時の死因では、火傷が最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息となっていました。

火災による経過別死者発生状況、つまり、火災により死亡に至った経過をみると、死者数(放火自殺者等を除く。)のうち、逃げ遅れが全体の46.0%を占めています。
その中でも「避難行動を起こしているが、逃げ切れなかったと思われるもの(一応自力避難したが、避難中火傷、ガス吸引し病院等で死亡した場合を含む。)。」が最も多く、全体の16.8%を占めています。

火災による経過別死者発生状況

住宅火災の発火源別死者数では、火災の原因は「たばこ」を発火源とした火災による死者131人(13.6%)と最多となっています。
次いでストーブが109人(11.3%)、電気器具が82人(8.5%)などとなっています。

住宅火災の発火源別死者数

消防白書を見る限り、火災に強い住宅にするには、火災が起こっても燃えにくい家にすることで、延焼時間を遅らせる建材仕様にし、自分たちが、少しでも早く避難できるように防火対策することが重要だと言えるでしょう。

使用した図は消防庁「令和4年版 消防白書」の「火災予防」より、抜粋し掲載しました。

参考:https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/part1_section1.pdf

(2)火災から家と人命を守る5つのポイント

ここでは、消防白書の内容を踏まえ、火災から家と人命を守るにはどのような家が必要なのか、そのポイント5つに整理しました。

1.隣家などのもらい火を避ける

まず、隣の家からのもらい火に対して強い家にすることがあります。
もらい火は、屋根や外壁に炎が襲いかかります。
それら屋根・外壁・軒裏などに燃えにくい建材を使用します。
防火地域では、建築基準法で外壁や軒裏、屋根瓦などに、30分以上火に耐えられる性能の材料を選ぶように義務付けられてもいます。
また、窓やドアなど開口部も、火が燃え移りやすい場所であるため、しっかり防火対策していきましょう。
延焼のおそれのある開口部には、網入りガラスサッシや防火戸がおすすめです。

2.他の部屋への延焼を遅らせる建材を使う

耐火性の高い建材(例: 耐火石膏ボード、不燃材、耐火性のあるドア、耐火性のある屋根材)を使用することで、火災が広がりにくくすることができます。
また、防火扉を設置することも有効です。防火扉は、部屋や階層の間に設置し、火災時に火や煙の拡大を制限することが出来ます。

3.2方向避難ができるようにする

家の中で2方向への避難経路を設計するのは、火災や他の緊急事態に対する安全対策として有効な方法です。
2方向への避難経路を設計することにより、1つの経路が封鎖されていても、もう一つの経路を使用できたり、煙や火の勢いに応じて最も安全な経路を選択できます。

4.住宅火災警報器をネットワーク型にする

災害対応としてのネットワーク型の警報器は、近隣の警報器と連携して、広範囲の火災を検知し、住宅内の全ての住人に警報を発信することができます。
また、近隣火災の場合にも早期検知ができ、冷静に迅速な対応を行うことができます。

5.消火設備を備える

住宅には消火器や消火栓などの消火設備を備えることが重要です。
出来れば、家の各部屋に消火装置を設置し、火災初期に対処できるようにすると良いでしょう。

(3)省令準耐火構造とは

人が暮らす住宅は火災時に被害を抑えるよう、法律で建物の構造や用いるべき材料などが決められています。
具体的なグレードとして、「耐火構造」、「準耐火構造」、「省令準耐火構造」などがあります。

「省令準耐火構造」は、財務省および国交省所轄の省令として設定されています。
住宅金融支援機構が定めた以下の工法のどれかに適合していることが条件となっています。

  • 木造軸組工法もしくは枠組壁工法(2×4)住宅
  • プレハブ住宅
  • 住宅金融支援機構が承認する住宅もしくは工法

「省令準耐火構造」とは、「類焼防止」と「延焼防止」がなされている建物です。

類焼防止:隣家などから火をもらわない

「省令準耐火構造」の第1の特徴は、隣家などから火をもらいにくくする延焼防止のための構造としています。
外壁・軒裏を防火構造(30分耐火)にする、屋根に瓦やスレートなどの不燃材を使用するなどの条件があります。

 

延焼防止:火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない

第2の特徴は建物内部での延焼についてもできるだけ遅らせる構造になっている点です。
火災が発生したとき、火は壁内の隙間や天井裏を通って燃え広がりますが、「省令準耐火構造」の建物はファイヤーストップ材を設けることで、壁の内側や天井裏を通って火が住宅全体に燃え広がるのを防ぎます。

 

耐火性に優れた「省令準耐火構造」にするメリットは、なんといっても命と財産を守れることです。
火災が起きても「省令準耐火構造」であれば、延焼を一定時間防ぐので、その間に初期消火活動や避難ができ、火災の被害を最小限に抑えることが可能です。
さらにメリットとして、「省令準耐火構造」と認定された場合、その家の「火災保険料・地震保険料」は割引されます。

「省令準耐火構造」は、火災に対する高い防火性を持ち、隣家からの火の移りや火災の拡大を遅らせる設計や材料の使用が条件とされています。
省令準耐火構造は火災から家と人命を守るために重要な要素となっています。

まとめ

火災から家と人命を守るためには、次の5つのポイント、「隣家からのもらい火を避ける」、「他の部屋への延焼を遅らせる建材を使う」、「2方向避難ができるようにする」、「住宅火災警報器をネットワーク型にする」、「消火設備を備える」を押さえることが重要です。
また、省令準耐火構造の建物であれば、火災に対する高い防火性を持つため、火災の被害を最小限に抑えることができます。
これらのポイントを押さえて、火災に強い住宅環境を整えましょう。

 

 

参考: