「オランダの住宅探訪」
縦長住宅デザインと魅力的な空間の秘密
オランダは、風車やチューリップで知られる北ヨーロッパの国で、日本ともゆかりのある国です。
長崎の「オランダ村」やシーボルト、ゴッホ、カステラなど、歴史的に多くの文化交流が行われてきました。
オランダの国土面積は日本の九州とほぼ同じで、人口は2024年時点で約1,776万人の擁し、国土の4分の1が海面よりも低い地域です。
この地理的特徴から水路を活用した交通網が発展し、独特の住環境が形成されてきました。
そのような環境を背景に、オランダの住宅は日本とは異なる特徴を持っています。
今回のブログでは、オランダの住宅の間取りや設計に見られる魅力的な要素をご紹介します。
(1)オランダにおける住宅不足と賃料高騰の現況
オランダは現在、深刻な住宅不足に直面しており、特にアムステルダム、ロッテルダム、ユトレヒトなどの主要都市では住宅需要が供給を大幅に上回っています。
この状況は、特に外国人労働者や留学生の増加を含む人口増加が要因で、住宅需要を急速に押し上げています。
需要と供給のバランスが崩れた結果、住宅価格や家賃が高騰し、多くの若者や学生が住まいを見つけるのに苦労している状況です。現在の家賃相場を見ると、アムステルダム周辺にある3階建て(ロウハウス)で月額2,400~3,500ユーロ(約40万~58万円)、マンションの2LDKで月額1,750~3,000ユーロ(約29万~50万円)に達しています。
このような住宅不足を解消するため、オランダ政府は低価格住宅の建設促進や家賃の上限制限の導入を検討しています。
住宅価格や賃料の高騰は、人口増加、特に移民と留学生の増加、住宅供給の不足、そして投資家による物件買い占めなどが複合的に影響した結果です。
今後の政府や民間による積極的な対策により改善が期待されています。
(2)オランダ住宅の特徴と魅力
オランダでは、歴史的、地理的、気候的な背景から、狭小で縦に高層の住宅が多く見られます。
以下では、オランダの住宅に見られる主な特徴について詳しく見ていきましょう。
上の間取り図は、https://note.com/wataridorilife/n/n284d06f46a1cを参考に作成しました。
1. 細長い3階建てや4階建ての構造
オランダの住宅は、限られた敷地を有効に活用するために、縦長で3~4階建ての構造が一般的です。
この縦長の設計は、かつての倉庫建築の名残であり、家の間口幅に応じて課税されていた時代の影響を受けています。
平均的な高さは約9~12mで、一般的なフロアごとの部屋の配置は以下のようなものが多いようです。
1階:リビングルームとキッチン
2階:寝室とバスルーム
3階(または屋根裏):追加の寝室やストレージスペース
2. レンガ造りの外壁と木材を用いた内装
オランダの住宅は外壁がレンガ造りで堅牢かつ耐久性があり、内部には木材が多く使われ、温かみのあるデザインが特徴です。
この建築スタイルは15世紀の大火以降、防火対策として採用されたものです。内装では梁や柱が露出していることが多く、キッチンの壁には青色(フライ・ブラウ)や外壁には伝統的な緑色(シー・グリーン)が用いられることが一般的です。
3. 屋根裏部屋(ザルダー)の活用
多くのオランダ住宅には「ザルダー」と呼ばれる屋根裏部屋があり、収納スペースや子供部屋、時には書斎として使用されます。階層が多いため、ライフステージに応じてフレキシブルに利用できるのも特徴です。
4. 大きな窓
オランダの住宅は大きな窓が特徴で、これは自然光を多く取り込み、風通しを良くするための設計です。特に暗い冬が長いオランダでは、できるだけ多くの自然光を取り入れるため、窓は大きく、室内は明るく保たれています。また、プライバシーを保護するため、厚手のカーテンやブラインドが取り付けられています。
5. エネルギー効率を重視した照明
オランダの住宅はエネルギー効率を重視した設計がされており、直接照明よりも間接照明が多く使われています。これらには調光機能が備えられており、昼間は大きな窓から自然光を主に利用する工夫もなされています。
オランダの住宅は、歴史や環境に根差した独自の工夫が凝らされたデザインが魅力です。
狭小ながらも機能性と快適さを兼ね備えた住まいは、現代でも多くの人々に支持されています。
まとめ
オランダの住宅は限られた土地を有効活用し、縦長で機能的な空間を実現する工夫が随所に見られます。住宅の供給不足や家賃高騰といった問題がある一方で、レンガ造りの外壁や木材を多用した温かみのある内装、大きな窓による自然光の活用など、オランダ特有のデザインが多くの人々に愛されています。
また、屋根裏部屋「ザルダー」の活用やエネルギー効率を重視した照明設計など、住まう人々の快適さや環境への配慮が盛り込まれており、生活空間の機能性とデザイン性を兼ね備えた住宅文化が根付いていると言えるでしょう。
参考:
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