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住宅設計建築家

2023.05.31

建築家はどんな家に住んでいるの?

建築家はどんな家に住んでいるの?


 

一般的に建築家の自宅のイメージと言えば、オシャレな家に住んでるのだろうとか、間取りなんかのも機能的でインテリアも豪華なんだろうなと想像する方もいるかと思います。

このブログでは、建築家が自宅を設計する時、建築家はどこにこだわり、どこにお金をかけているのか、一般の人とどこが違うのかなど、美化されたイメージの強い建築家の理想と現実などを整理しました。

建築家は自宅のどこにこだわって設計するのか

建築家は、ご自分の家を設計するのだから、「家のすべてにおいてこだわりを持って設計するのだろうな」と思われている方が多いと思います。
ですが、ほとんど場合、すべてにおいてこだわるということはまず、ありません。

建築家がこだわるところは、ご自分の建築家としての設計理念にこだわる方が多いと言えます。
ですから、そのこだわりどころは建築家それぞれにあって、それぞれ違っていると言えるでしょう。

事例として、最後に紹介する、伊東豊雄氏の設計した自宅、「シルバーハット」は伊東氏の得意とする軽やかな構造と自然光を大胆に取り入た有名な自宅です。
この「シルバーハット」は、まさに、伊東氏の建築コンセプトである「建築と自然の融合」を具現化していると言えます。

建築家の自宅は、伊東氏のように自身の設計理念にこだわっていると言えますが、昨今の建築家が重視しているポイントとして多いのが、「建築の機能性」、「環境への配慮」をバランスよく、組み合わせるという設計です。

建築の機能性とは、自宅が快適で使いやすい空間として機能することです。 家族がそれぞれのライフスタイルや動線に合わせた間取りを最適化することにこだわります。
また、環境への配慮とは、省エネやSDGsな設計です。 具体的には再生可能エネルギーの活用であったり、エコフレドリー素材の使用や、適切な換気システムを設置することです。
できる限り、環境負荷を低減する自宅を設計したいと考えている建築家は多いようです。

建築家は自宅のどこにお金をかけるのか

建築家は収入も高いし、自宅に使用する素材や仕上げは、さぞ、高品質で耐久性の高い、特殊な塗装など施した設計を行う建築家が多いような気がしますが、実際はどうなのでしょうか?

確かに、自宅には予算をかける建築は多いようですが、ある建築家のコラムなど読むとインテリアの仕上げにはあまりお金をかけない。
つまり、重要なのは、表面的な部分(インテリア)ではなく、建物内部の素材、構造にお金をかけると述べています。内部の構造や素材と言ったものは、建物の安定性、耐久性、機能性に直結する部分ですよね。その内部にお金をかけるのは理にかなっています。
また、表面的な部分は、飽きたら後からいくらでも張り替え、塗り替えが可能ですが、長期的に使う内部の構造や素材に品質の高いものを使用することでメンテナンスや修繕費用の削減にもつながります。
見た目ではなく、内部に、つまり、耐震性を確保するための骨組みや柱、梁の材料、断熱性や防音性を向上させる高品質の断熱材や遮音材などにお金をかけているんです。

それでは、具体的に一級建築士の自宅を紹介しているWEBサイトがありましたので、どのような家に住んでいるのか見ていきましょう。

建築家が設計した7.5坪の自宅

狭いスペースでも心地よい住まいを実現できることを証明した一級建築士の青柳さんご夫婦の自宅は、なんと建坪7.5坪の変形敷地に建っています。
この狭いスペースには、建築家ならではのアイデアで快適な居住空間を実現しています。

青柳さん宅は、床面積確保のために地下2階を堀り、ご自宅は4層を確保しています。
各フロアは、まわり階段や部屋の隅に吹抜を設けて、光や空気を通しています。
天井はすべて珪藻土で光が優しく回っています。また、キッチンは狭いスペースにも関わらず、5.5mと巨大な壁付けされたキッチンになっています。
ここはあえて小さな家にありがちな、こじんまりしたキッチンではなく、大きなキッチンにすることで、狭さを感じさせないという建築家ならではのアイデアです。リビングなど空間には冷蔵庫やテレビといったスケール感が分かるものは一切なく、これも部屋を狭く感じさせない工夫と言えます。
建築家夫妻の創意工夫により、狭いスペースでも快適な住まいとなっています。

参考: 光と影、曲線がもたらす 美しく上質な住まい

建築家がリノベーションした自宅

次に紹介するのは、隈研吾建築事務所にご夫婦で勤務する、須磨哲生さんと寺川奈穂子さんの自宅です。
この家はもともと祖母が住んでおり、リノベーションされた自宅です。 写真から、コンクリートという人工的な素材と木の素材感がバランスよく調和した、リノベーションならでは温かさが感じられます。

玄関からすぐ入って広がるのはL字型の大きな造作キッチンです。
こちらのご夫婦もリノベーションするにあたってのポイントはいかに空間の広がりを感じさせるかという点となっています。

そんなに広くない空間には部屋(間仕切り壁)はなく、天井を抜き、天高を高くし、壁は高さを190㎝に押さえることで空間上部に隙間を作り一体感を出しています。

また、壁の素材はOSB(木片を圧縮接着した構造用パネル)を磨いたものを使用し、コンクリートの躯体に、ナチュラルな木の素材感、温かさを加えています。
バスルームもガラス張りにし、開放感があり、ここも空間の広がりを重視しています。

建築家、隈研吾の設計事務所に勤務するが故か、自然素材との調和が感じられる個性的なご自宅です。

参考: 大胆な発想で個性を活かすリノベーション

建築家、伊東豊雄の自宅

建築家、伊東豊雄が設計した自宅として有名な建築が「シルバーハット」です。
現在この「シルバーハット」は、愛媛県今治市の伊東豊雄建築ミュージアムに移築されています。

伊東豊雄は、せんだいメディアテーク、シルバーハット、多摩美術大学図書館、水の教会、プラダ基金文化財団ビルなどが代表作です。
彼の建築の特徴は、軽やかな構造体と自然光の取り入れにより、環境とみごとに調和している点で、自宅として設計した「シルバーハット」はそのコンセプトを具現化した建物といえるでしょう。

シルバーハットは、コンクリートの柱にかまぼこ型の軽量な鉄骨フレームが乗った構造となっています。
構造はRC造の上に鉄骨のヴォールト屋根がかかり、アルミパンチングを使用することで明るさや仮設的の軽快さを出しています。

住まいの中心には中庭を配置した開放的なつくりで、当時としては家というより、ハウス小屋のような実験的な奇妙な家と映っていたかもしれません。
ですが、伊東氏の設計した自宅は、建築における新しい可能性を示唆した作品として代表作となりました。

参考: シルバーハット

まとめ

ここまで見てきたように、建築家の自宅というは、他の設計プロジェクトとは異なり、ご自身の建築哲学や様々なアイデアを実証・実験する場と言えるかもしれません。