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2026.03.27

住宅の未来を編む | サステナブル素材・建材と設計者の視点

住宅の未来を編む
サステナブル素材・建材と設計者の視点

 

住宅のサステナビリティを考えるとき、多くの人は「自然素材ならよい」、「再生材なら環境にやさしい」と捉えがちです。
しかし実務では、それだけでは不十分です。

住宅は、材料の採取・製造・運搬・施工・使用・修繕・解体・再利用までを含む「ライフサイクル全体」で評価する必要があります。
近年は国土交通省によるLCA(ライフサイクルアセスメント)やLCCM住宅の検討が進み、環境省もZEHを通じて、運用時エネルギーまで含めた住宅のあり方を示しています。

つまり、これからの住宅づくりでは「何でできているか」だけでなく、「どう使われ、どれだけ長く、低負荷で使い続けられるか」が重要です。

今回のブログでは、まず「サステナブル素材」と「サステナブル建材」の違いを整理し、後半では設計者の視点から実装の考え方を解説します。
これからの住まいづくりの判断軸として、ぜひ参考にしてください。

 

■「サステナブル素材」と「サステナブル建材」の違い

「素材」と「建材」は似ているようで、設計上の意味は大きく異なります。
「サステナブル素材」とは、自然由来・再生可能・低環境負荷な原材料そのものです。
例えば、木、土、竹、コルク、羊毛、古紙、再生ガラスなどが該当します。
一方、「サステナブル建材」とは、それらの素材を加工・製品化し、建築に使用できる形にした建築用材料です。

さらに重要なのは、建材は「ライフサイクル全体」で評価される点です。
製造時のCO2排出、耐久性、更新性、リサイクル性なども含めて判断されます。

例えば、木は「素材」、CLTや集成材は「建材」です。
古紙は「素材」、セルロースファイバーは「建材」です。
石灰は「素材」、漆喰は「建材」です。

なお、木材を使用した建材であっても、接着剤の使用量や解体後の再利用性によっては、環境性能が限定的になる場合もあります。
設計においては、この「素材」と「建材」を分けて考えることが重要なのです。

(1)住宅を形づくる「サステナブル素材」の5分類

サステナブル素材とは、再生可能性や循環性が高く、採取や製造時の環境負荷が比較的小さく、長く使える、もしくは再利用しやすい材料群を指します。
ただし、自然素材であれば自動的にサステナブル、というわけではありません。
輸送距離が長すぎる、採取管理が不透明、耐久性が低く短期間で交換が必要、化学処理が多い、といった場合は評価が下がります。
大切なのは、由来・製造・使い方・寿命・再利用まで含めて見ることです。
住宅の“もと”になる材料には、主に以下の5つのグループがあります。

①木質系素材

木質系素材は、住宅におけるサステナブル素材の代表格です。
木材はCO2を固定する「カーボンストック」として機能し、森林の循環利用にも貢献します。

【例】
・無垢材(杉・檜・唐松・オークなど)
・地域材・間伐材
・認証木材(FSC認証材など)
・再生木材(木粉+樹脂など)

【特徴】
・CO2を吸収・固定する(カーボンストック)
・加工エネルギーが少ない
・森林管理が重要(乱伐はNG)

②土・鉱物系自然素材

土や鉱物系の自然素材は、日本の住宅文化と非常に相性がよい分野です。
特に湿度変化の大きい気候では、塗り壁系素材が室内環境の質に貢献してきました。

【例】
・土(粘土・聚楽土・荒壁土など)
・漆喰(石灰)
・珪藻土
・石・砂・石灰系素材

【特徴】
・調湿性・蓄熱性が高い
・化学物質が少ない
・再利用・分解が容易

③植物由来素材

植物由来素材は、再生速度の速さや軽量性、加工のしやすさから、近年さらに注目されています。

【例】
・竹
・麻(ヘンプ)
・コルク
・藁(ストローベイル)
・セルロース(木質繊維)

【特徴】
・再生可能(成長が早い)
・軽量で断熱性あり
・地域資源として活用しやすい

④動物由来素材

住宅分野では種類は多くありませんが、性能面で独自の価値を持つ素材があります。

【例】
・羊毛(断熱材)
・貝殻由来石灰
・カゼイン・天然由来接着成分

【特徴】
・自然分解可能
・湿度調整機能あり
・防火・断熱性能に優れる場合あり

⑤リサイクル素材(原料)

リサイクル素材はサステナブル素材を語るうえで欠かせません。
ただし、ここでいうリサイクル素材は「建材になる前の原料」として捉えると理解しやすくなります。

【例】
・再生木材チップ
・再生ガラス
・再生プラスチック
・古紙
・再生金属

【特徴】
・廃棄物削減に寄与
・資源循環型社会に貢献

(2)実装するための「サステナブル建材」選び

サステナブル建材とは、住宅の構造、外装、内装、断熱、設備などに実際に使われる製品のうち、環境負荷低減や資源循環、長寿命化、低炭素化、省エネ性能向上に寄与するものを指します。
大林組の建築資料でも、サステナブル建材については、低炭素建材はCO2排出量を抑制する建材、脱炭素建材は植物由来原料や化石燃料依存を抑えた資材、また建物全体の環境性能向上に資するものまで含めて、捉えられています。
ここでは、住宅での実装を前提にサステナブル建材について整理しました。

①構造材系のサステナブル建材

建物の骨組みを形成する構造材は、サステナブル設計の中核です。

【例】
・認証木材の製材・構造材
・集成材
・LVL(単板積層材)
・CLT
・構造用木質ボード(OSB・構造用合板など)

【特徴】
・木材は再生可能資源であり、CO2を固定する特性がある
・地産地消により輸送エネルギー削減
・CLTは中高層建築にも対応可能

②外装・仕上げ材

外壁・内装材はデザイン性と環境配慮の両立が求められる分野です。

【例】
・漆喰仕上げ
・珪藻土仕上げ・土壁仕上げ
・無垢フローリング
・竹フローリング・竹パネル
・コルク床材
・再生タイル・再生ガラス系仕上げ材

【特徴】
・廃材を活用した独特の質感
・化学物質削減による健康性向上
・室内環境改善(調湿・消臭)

③断熱材系のサステナブル建材

断熱材は、住宅の運用時エネルギーを大きく左右するため、サステナブル建材の中でも特に重要です。
ZEHでも、高断熱化は最重要要素の一つです。

【例】
・セルロースファイバー(古紙)
・羊毛断熱材
・木質繊維断熱材
・炭化コルク断熱材
・再生PET系断熱材

【特徴】
・再生資源利用
・調湿・防音性能あり
・廃棄時の環境負荷が小さい

④コンクリート・無機系のサステナブル建材

環境負荷が大きい材料だからこそ、革新が進んでいる分野です。

【例】
・低炭素コンクリート
・高炉スラグセメント
・再生骨材コンクリート
・石膏ボード(再生石膏活用)

【特徴】
・セメント製造のCO2削減
・廃材再利用
・長寿命化

⑤金属系建材のサステナブル建材

再利用性の高いのがこの分野の建材です。
国土交通省資料では、アルミサッシは回収・再資源化の仕組みが比較的進んでいますが、ガラスや複合部材は分離・回収の難しさが課題とされています。

【例】
・再生アルミサッシ
・電炉鋼材・再生鋼板
・金属屋根・金属サイディング

【特徴】
・再利用率が高い
・長寿命で循環性が高い
・軽量で施工性が高い

⑥設備・エネルギー関連建材

ここは“素材感”よりも、「住宅の運用時エネルギーを下げる建材・設備」として分類されているのがポイントです。
建材というより「住宅性能」を支える要素です。

【例】
・太陽光パネル
・蓄電池
・高断熱サッシ(Low-Eガラス)
・ヒートポンプ給湯器

【特徴】
・エネルギー消費削減
・ランニングコスト低減

⑦アップサイクル建材(注目分野)

アップサイクル建材は、単なる再利用ではなく、廃棄物や余剰資源に新たな価値を与えて建材化する分野です。
住宅の個性づくりにも強く、これからさらに伸びる領域だと考えられます。

【例】
・廃プラスチック・廃繊維由来の化粧パネル
・再生紙・古紙圧縮パネル
・古材フローリング・古材パネル
・再生ガラス・陶片タイル
・リユース建具・リユース金物

【特徴】
・廃棄物を高付加価値化
・デザイン性と環境性を両立
・唯一無二の素材感

(3)まとめ:実装するための住宅設計の視点

サステナブル素材と建材の違いは、実務では次のように整理できるでしょう。
・素材=「何からつくられているか」
・建材=「どの性能を持つ製品として使うか」
この違いを理解することで、「自然素材なのに性能が低い」、「環境配慮型なのに長持ちしない」といった設計のミスマッチを防ぐことができます。
そして、「サステナブル素材や建材」実装のポイントは、次の3つにまとめます。

① 「運用のエネルギー」を確実に下げる

どれほど良い素材を使っても、冬寒く夏暑い家では冷暖房でエネルギーを浪費します。
まずは断熱材や窓の性能を優先し、「燃費の良い家」にすること重要です。

② 「直しながら長く使える」か

漆喰や無垢の床は、傷ついても補修ができ、時が経つほどに味わい(エイジング)が増します。
使い捨てではなく、「手入れを楽しめる材料」を選ぶことが、結果として建物の寿命を延ばします。

③ 「愛着」が持てるか

サステナブルな家は、住まい手が「この家を大切にしたい」と思う気持ちがあって初めて完成します。
素材の背景にあるストーリーを知り、愛着を持って住み続けることこそが、最大の環境貢献と考えます。サステナブルな住宅とは、単に自然素材を使うことではありません。
「低負荷でつくり、快適に暮らし、長く使い、循環させる」この一連の流れを成立させることが、重要な視点です。
素材の美しさと建材の合理性を両立すること。
それが、これからの住宅設計に求められる視点であり、未来につながる住まいづくりの鍵と考えます。

参考: