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2026.01.16

「カナダの住まい探訪」住宅市場予測と寒くないカナダの家づくり

「カナダの住まい探訪」
住宅市場予測と寒くないカナダの家づくり

 

カナダは北アメリカ大陸の北部に位置し、世界で2番目に広い国土を持つ国です。
豊かな自然に恵まれ、多様性を尊重する穏やかな社会を築いており、教育水準や治安の良さから「住みやすい国ランキング」でも常に上位に名を連ねています。
では、そのような国で暮らす人々は、どのような住宅に住み、厳しい寒さと向き合いながら日常を送っているのでしょうか。
今回のブログでは、2026年のカナダの住宅市場予測をはじめ、カナダ特有の住宅タイプや間取りの特徴、そして世界最高水準といわれる断熱・気密性能までを詳しく解説します。
カナダの家づくりから、日本の住まいにも活かせるヒントが見えてくるはずです。

(1)2026年、カナダ住宅・不動産市場は回復局面へ?

■2026年、カナダ住宅市場は「調整期」から「安定期」へ

2025年11月時点で、カナダの新築住宅価格は前月比横ばいとなり、10月の0.4%下落を最後に、約8か月続いた下落傾向が一旦止まりました。
この動きは、住宅市場が底打ちしつつある兆しとして注目されています。

カナダ不動産協会(CREA)の予測によると、既存住宅の売買件数は2025年に前年比約1.1%減少したものの、2026年には約7.7%増加し、約50万9,000件に達する見通しです。
急回復ではありませんが、市場は不安定な局面を抜け、徐々に安定期へと向かうと見られています。

①住宅価格の見通しは「緩やかな反発」

全国平均の住宅価格は、2025年に前年比約1.4%下落し、約67万6,700カナダドル(約7,600万円)まで下がりました。
しかし2026年には、約3.2%上昇し、約69万8,600カナダドル(約7,900万円)に回復すると予測されています。

重要なのは、過去のような急騰ではなく、「低い伸び率での反発」にとどまる点です。
金利や住宅供給、政府規制を背景に、市場はより現実的で持続可能な水準へ移行しつつあります。

②物件タイプ別に見る「二極化」の進行

2026年のカナダ住宅市場を語るうえで欠かせないのが、物件種別による二極化です。

一戸建て住宅:
依然として根強い需要があり、多くの都市で2%前後の価格上昇が見込まれています。特に郊外やファミリー層向け住宅は安定した人気を保っています。

コンドミニアム(マンション):
トロントやバンクーバーなどの大都市では供給過多が続いており、2~4%程度の価格下落が予測されています。
投資家が慎重姿勢を強める中、実需層、とくに初めて住宅を購入する層にとっては好機と言えるでしょう。

タウンハウス:
価格と広さのバランスに優れ、ファミリー層からの支持が拡大しています。中小都市や比較的手頃な価格帯のエリアで、特に注目が集まっています。

③地域別に見る住宅価格の違い

住宅価格の動向は、都市・地域によって大きく異なります。

トロント・バンクーバー:
高価格帯と借入コストの影響により、▲3.5~4.5%程度の下落が続く見通しです。

モントリオール・ケベックシティ:
比較的堅調で、特にケベックシティでは約12%の価格上昇という強気の予測も出ています。

ウィニペグ、オタワ、カルガリーなどの地方都市:
大きな変動はなく、緩やかな上昇基調が続くと見られています。

④賃貸市場は引き続き「貸し手優位」

住宅価格の高止まりと金利負担の影響により、賃貸需要は引き続き高水準です。
空室率は低く、特に都市部では賃料上昇が続く貸し手優位の市場環境が続いています。

■2026年 カナダ政府の住宅支援策

初めて住宅を購入する人への支援強化:
2026年、カナダ政府は初回購入者を対象とした包括的な住宅支援策を発表しました。

GST(物品サービス税)の免除:
100万カナダドル以下の新築住宅についてGSTを免除。
購入者は最大5万カナダドル(約560万円)の負担軽減が見込まれます。

外国人購入禁止措置の延長:
住宅価格高騰への対策として2023年に導入された、外国人による住宅購入の一時禁止措置は2027年1月まで延長されています。
ただし、この政策の市場全体への効果については、専門家の間でも評価が分かれています。

まとめ

2026年のカナダ住宅市場は、「価格が上がるのか、下がるのか」という単純な二択で語れる時代を終え、地域・物件タイプ・購入目的によって結果が大きく異なる成熟市場へと移行しつつあるといえるでしょう。

全国平均の住宅価格は、約1%前後の緩やかな上昇が見込まれている一方で、トロントやバンクーバーといった大都市ではやや下落傾向が続き、地方都市では比較的堅調な推移が予測されています。

また、賃貸市場では引き続き需要が高く、賃料水準は依然として高止まりしていますが、住宅供給は徐々に改善に向かうと見られています。

こうした状況を踏まえ、専門家の多くは、2026年の住宅市場について「劇的な回復ではなく、持続可能で穏やかな成長」が特徴になると分析しています。
急激な価格変動を期待する局面ではなく、冷静な判断と長期的な視点が、これまで以上に求められる年になるのではないでしょうか。

(2)カナダの住宅の種類、戸建て住宅の間取りの特徴

■カナダの住宅の種類

カナダの住宅市場には、プライバシー、維持費、所有責任の面で異なる様々な住宅タイプがあります。
以下、主要な住宅タイプを解説します。

①一戸建て(Detached House)

一戸建ては隣接する物件と壁を共有しない完全に独立した住宅です。広さ、高いプライバシー、広い敷地サイズが魅力で、通常、最も高価な選択肢となります。

特徴:
・隣接する家と壁を共有せず、完全な独立性がある
・高いプライバシーと大きな屋外スペース(庭など)を提供
・改装やインテリアの自由度が非常に高い
・庭やガレージなどのスペースが自由に使える

②セミデタッチド(Semi-Detached)

セミデタッチドホームは、隣接する一つの物件と壁を共有している住宅です。一戸建てよりも費用を抑えたいが、コンドミニアムよりも多くのプライバシーと屋外スペースを求める方に適しています。

特徴:
・隣の家と壁を一つ共有
・通常、共用のフェンスで区切られたプライベートな庭が含まれる
・一戸建てよりも購入・維持費が抑えられる

③タウンハウス(Townhouse)

タウンハウスは、両側を隣接するユニットと壁で共有している長屋形式の住宅です(端のユニットを除く)。手頃な価格、都市部の立地、機能的な間取りで人気があります。

特徴:
・横に並んで連結、壁を二つ共有(端のユニットを除く)
・小さな庭、パティオ、ガレージが付いている場合が多い
・独立したエントランスを持つ
・主に2階~3階建ての木造構造

④コンドミニアム(Condominium)

コンドミニアムは、高層または中層の建物内にある個別のユニットです。
所有者は自分のユニットの内部のみを所有し、共用エリアはコンドミニアム組合によって共同で維持されます。

特徴:
・高層または中層の建物内に位置
・プール、ジム、ラウンジなどの共用設備が利用可能
・セキュリティが整っている場合が多い
・都市部の利便性の高いエリアに立地

⑤プレックス(Plexes)

プレックスは、2~4つの独立した居住スペースを持つ集合住宅です。
以下の種類があります。
・デュプレックス(Duplex):2つのユニット
・トリプレックス(Triplex):3つのユニット
・フォープレックス(Fourplex):4つのユニット

特徴はそれぞれに独自の入り口があり、独立した居住スペースを持ちます。所有者が一つのユニットに住み、他のユニットを賃貸に出して収入を得ることが可能です(家主としての責任が伴う)。

■カナダの戸建て住宅の間取りの特徴

カナダの独立戸建ての典型例は、延床120~180㎡前後、3ベッドルーム+2~3バスルーム、オープンコンセプトのLDKという構成が主要となっています。
州別に違いはありますが、ー戸建ての平均住宅価格は約78万7,600カナダドル(約9,060万円)となっています。

① ベースメント(地下室)が「第二のリビング」

カナダの一戸建てには、ほぼ必ずベースメント(地下室)が存在します。
これは極寒地域ならではの理由があります。
厳しい冬の寒さで地面が凍って家が傾いてしまうのを防ぐため、基礎を深くしっかり作ることで家を安定させる必要があるためです。この深い基礎を活用して、居住スペースとして活用するようになりました。

半地下(Walk-out Basement)と完全地下(Full Basement)があり、用途は以下のようになっています。
・ファミリールーム(家族の団らんスペース)
・ゲームルーム・娯楽室
・ホームオフィス・書斎
・ゲストルーム
・ランドリールーム
・独立したアパート(Legal Basement Suite)として賃貸

② マスターベッドルーム(主寝室)の豪華さ

カナダの戸建て住宅のマスタールームは、家の中で最も広い主寝室です。
多くのマスタールームは専用のバスルームやウォークインクローゼットが備わっており、快適でプライベートな空間を提供します。

マスタールームの特徴:
・エンスイート(En-suite):専用のバスルーム付き
・ウォークインクローゼット:広い収納スペース
・広々とした寝室空間:20㎡以上が一般的
・2階に配置されることが多い

③ オープンコンセプトとマッドルーム

カナダの戸建て住宅では、キッチン、ダイニング、リビングが一体化した「オープンコンセプト」の間取りが主流です。

特徴:
・壁で区切られていない開放的な空間
・家族や友人との交流を重視したデザイン
・自然光が入りやすい大きな窓
・広々とした印象を与える設計

④デン(Den)という多目的スペース

デンは、リビングや寝室から独立した小さなスペースで、カナダの住宅に特徴的な間取りです。
日本でいう「ヌック」的な個室です。

用途:
・ホームオフィス
・書斎
・読書室
・小さなゲストルーム
・趣味の部屋

⑤セントラルヒーティング

カナダの厳しい冬に対応するため、すべての戸建て住宅にはセントラルヒーティング(全館暖房)システムが標準装備されています。
カナダの家は人を暖める「採暖」ではなく、家全体を暖める「ルームヒーティング=暖房」が基本です。

特徴:
・家全体を一定温度以上に保つシステム
・各部屋に温風を送るダクトシステム
・燃料は天然ガスまたは電気
・サーモスタットで温度を一括管理

まとめ

カナダの住宅の間取り特徴は、地下室を趣味の部屋にしたり、広いマスタールームでリラックスしたりと、家の中で過ごす時間をいかに豊かにするかという哲学が反映されています。
特に、冬の寒さを逆手に取ったベースメントの活用や、家全体を包み込むセントラルヒーティングの暖かさは、カナダの暮らしの大きな魅力と言えるでしょう。

(3)気になるカナダ家は寒くないの? カナダの断熱基準は? 日本との違いは?

冬のカナダと聞くと、「家の中も凍えるほど寒いのでは?」と想像してしまいますよね。
カナダの冬は地域によっては氷点下20℃以下になることもあり、外は非常に寒くなります。
では、カナダの家の中は寒いのか?というと、答えは「快適に暖かい」です。
これはカナダの住宅が、寒冷地の気候に対応するための高い断熱・気密性能を標準としているからです。以下にカナダの断熱基準など整理しました。

①マイナス30度でも半袖!? カナダの家が「寒くない」本当の理由

実は「カナダの家は、日本の家よりも圧倒的に暖かい」のが現実です。
なぜ、外気は痛いほどの寒さなのに、室内では半袖でアイスクリームを食べられるほど快適なのでしょうか?
その秘密は、カナダの国独自の厳しい「断熱基準」と「住宅構造」
にあります。

カナダの住宅は、そもそも「寒さを防ぐ」のではなく「熱を逃さない魔法瓶」のような構造をしています。

前段にも記しましたが、カナダの家はセントラルヒーティング(全館空調)が当たり前です。
日本のように「使う部屋だけ暖める」のではなく、家全体を一定の温度に保ちます。
さらに、2×6(ツーバイシックス)工法」の採用し、日本で一般的な2×4工法よりも壁が厚く、その分、断熱材をたっぷりと詰め込むことができます。

また、隙間風を徹底的に排除しているため、一度暖まった空気が外に逃げない高い断熱基準によるものなのです。

②世界最高水準!カナダの断熱基準

カナダには、世界で最も厳しいとされる住宅性能基準「R-2000」があります。
これは、省エネ、健康、環境保護を目的とした国家規格です。

断熱材の厚み:
日本の一般的な住宅に比べ、壁の断熱材の厚さが2倍以上になることも珍しくありません。

窓の性能:
窓は熱が最も逃げやすい場所です。カナダでは「トリプルガラス(3重)」や「樹脂サッシ」が標準的で、窓際に行ってもヒンヤリすることがありません。

③日本の住宅との決定的な違い

カナダと日本の家に対する最大の違いは「健康に対する考え方」だと思います。。
欧米では「寒い家は健康を害するもの」として、法律や基準で最低室温が定められている地域もあります。
一方、日本は「省エネ」の観点での基準はありますが、健康面からの断熱義務化はまだ浸透していないように感じます。

日本とカナダの住宅性能を比較すると、いくつかの大きな違いが見えてきます。

カナダの家:
・断熱性能(UA値):約0.3 以下(数値が低いほど高性能)
・壁の厚み:2×6(約140mm)以上が主流
・窓の構造:樹脂サッシ・トリプルガラスが主流
・暖房スタイル:セントラルヒーティング(全館集中暖房)

日本の家:
・断熱性能(UA値):約0.4~0.8 程度
・壁の厚み:2×4(約90mm)が主流
・窓の構造:アルミサッシ・複層ガラスが多い
・暖房スタイル:エアコン・ストーブ(部分暖房)

まとめ

カナダの家が寒くない理由は、厳しい自然環境の中で磨かれてきた「極厚の断熱」と「高い気密性」にあります。
「冬の朝、布団から出るのがつらい」と感じる住まいの悩みも、こうしたカナダの住宅性能を取り入れることで、大きく改善できるかもしれません。

近年、日本でもカナダ基準の輸入住宅や高断熱住宅が増え、国も断熱等級6~7や太陽光発電・蓄電を組み合わせた高性能住宅を推進しています。
これから家づくりを考えるなら、「カナダ基準」という視点で住まいを見直してみるのも一つの選択肢ではないでしょうか。

参考: