
環境共生型住宅とは
3つの基本理念と世界の先進事例
近年、環境への配慮が求められる中で、「自然と共存する住宅」が注目されています。
このブログでは「環境共生型住宅」を取り上げ、その3つの基本理念「地球環境への配慮」、「周辺環境との調和」、そして「健康で快適な住環境」についてわかりやすく解説します。
さらに、日本と世界の最新事例も紹介します。
これからの家づくりに必要な視点と、持続可能な住まいの未来につながる暮らしのヒントが得られるでしょう。
(1)環境共生住宅の3つの基本理念
環境共生型住宅とは、「地球環境への配慮」「周辺環境との調和」「健康で快適な住環境」の3つの柱を持ち、エネルギーや資源の有効活用、地域や自然とのつながりを重視した住宅を指します。
ここでは「環境共生住宅」の3つの基本理念について詳しく解説します。
■地球環境への配慮
環境共生住宅の第一の理念は「地球環境への配慮」です。
これは、住宅が地球温暖化や資源の枯渇といった地球規模の環境問題に対して負荷を最小限に抑えることを目的としています。
【取り組み】
・省エネルギー設計:断熱性・気密性の高い住宅で冷暖房のエネルギー消費を抑制。
・再生可能エネルギーの活用:太陽光発電、太陽熱利用、地中熱などを導入。
・エネルギーの見える化:HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などを用いて電力使用量を把握し、無駄を削減。
・資源循環:雨水の再利用、屋上緑化、生ごみコンポストなど、資源の有効活用を促進。
■周辺環境との親和
周辺環境との調和は、新築又はリノベーションされた住宅が建つ地域の自然、景観、生態系、地域社会との共存を図ることが求められます。
【取り組み】
・緑化と生態系保全:庭や外構に在来植物を使うことで、昆虫や鳥類などの生物多様性を守る。
・景観への配慮:地域の街並みに合ったデザイン、屋根の色や高さ制限など、周囲との調和を重視。
・通風・日照の配慮:隣家の日照や風通しを妨げない設計。
・地域資源の活用:地元の木材や伝統的な工法を取り入れ、地域経済と文化の継承にも貢献。
■健康で快適な住環境
住まい手が安心して、心身ともに健やかに快適に生活できる住環境を実現することが求められます。
【取り組み】
・自然素材の利用:無垢材や漆喰など、化学物質を抑えた素材でシックハウス症候群を防ぐ。
・通風と採光:自然光と風をうまく取り入れ、心地よく、エネルギー負荷も軽減。
・温熱環境の最適化:断熱・気密性に優れた設計により、夏は涼しく冬は暖かい室内を維持。
・騒音対策やプライバシー保護:快適性を保つために、音や視線への配慮も設計に反映。
これら3つの柱をバランスよく実現することが、真の意味での「環境共生住宅」の鍵となるのです。
国内の優れた事例では、住宅の生産時から廃棄までCO2を抑制したセキスイハイムの「循環型モデル」や風を活かす設計、通風・採光を重視(周辺環境との調和)した沖縄市の「花ブロックの家」や、地域特性を活かし、熱環境・風環境に配慮した松山市の「土間と風の家」など、公的にも推奨される気候適応型住宅として非常に優れた事例があります。
これらはすべて、「地球環境配慮」、「周辺調和」、「健康快適性」の三位一体を実現しており、これからの住宅のあるべき姿と言えるでしょう。
参考:
https://mshome.tv/guide/5712/
“環境共生住宅”とはどんな家?条件やデメリット・注意点を分かりやすく解説
(2)世界の環境共生型住宅の最新事例
ここでは、世界各地から選ばれた最新の環境共生住宅の優れた事例を3つ紹介します。
いずれも「地球環境への配慮」「周辺環境との調和」「健康で快適な住環境」という3つの理念を体現した、先進的かつ注目すべきプロジェクトです。
■One River North(コロラド州デンバー)
アメリカで注目されている最新の環境共生住宅のひとつが、コロラド州デンバーに建設された「One River North(ワン・リバー・ノース)」です。
2024年に完成したこの集合住宅は、都市生活と自然体験を融合させた革新的なプロジェクトとして高く評価されています。
この先進的共同住宅は健康とウェルビーングに配慮した設計でFitwel認証を取得しており、屋上にはスパや庭園付きの空中庭園を備え、都市にいながら自然を感じる暮らしが可能です。
生態系への配慮や水の要素も取り入れた設計で、都市生活と自然体験の融合を実現しています。
都市型環境共生住宅の新たなモデルとして、今後の建築のあり方に一石を投じる事例と言えます。
参考:https://mag.tecture.jp/culture/20241017-one-river-north/
MADアーキテクツによる 渓谷の中で暮らす集合住宅
■Huff’n’Puff Haus(ビクトリア州、オーストラリア)
「Huff’n’Puff Haus(ハフンパフ・ハウス)」は、オーストラリア・ビクトリア州の自然豊かな山岳地帯に建てられた完全オフグリッド型(電力会社の送電網(グリッド)に接続せず、自ら電力を生み出して生活する仕組み)住宅です。
素材には圧縮した藁(ストローベイル)を積み上げて壁をつくり、その上に土や漆喰を塗って仕上げる自然素材を使用し2022年に完成しました。
この建物は再生可能エネルギーや雨水利用システムを備え、エネルギー自給率は100%以上です。
自然素材を活かしたバイオフィリックデザインや防災性能にも優れ、「Passivhaus Premium認証」を取得しました。
構造にはプレハブ化されたストローベイルパネルを採用し、断熱性と環境負荷の削減を両立しています。
また、老後の暮らしも見据えたユニバーサルデザインが施され、「人と地球にやさしい暮らし」を実践するモデルハウスとして、国内外で高い評価を受けています。
参考:https://www.envirotecture.com.au/projects/project/huff-n-puff-haus
ハフ&パフハウス
■CIRCULAR HOUSE(デンマーク・コペンハーゲン)
「CIRCULAR HOUSE(サーキュラー・ハウス)」は、デンマーク・オーフス郊外に建設された、資源の循環利用を徹底した社会住宅プロジェクトです。
建物の90%以上が再利用可能な建材で構成され、分解・再構築を前提とした構造を採用。
6種類のプレキャスト部材とマテリアルパスポートにより、将来的な資源再利用を可能にしています。
この住宅は、建築分野におけるサーキュラーエコノミーの実証実験場として設計され、30社以上が参加する業界横断の協働プロジェクトです。
アップサイクル素材の活用や環境負荷の軽減により、経済的・環境的に持続可能な建設の新しいモデルを提示しています。
住宅は、ただ単に建てることだけでなく、「その後どう使い、どう再活用するか」まで見据えるサスティナブル住宅を実現しています。
参考:
https://www.creativedenmark.com/cases/circle-house-denmarks-first-circular-social-housing-units
サークルハウス:デンマーク初の円形社会住宅ユニット
まとめ
「環境共生型住宅」は今、世界各地で急速に普及が進んでいます。
アジア太平洋地域ではすでに住宅市場の過半数を占め、中国では63.5%以上という高い普及率を記録しています。
欧米ではZEHやLEED認証をはじめとする先進的な取り組みが進み、2030年までに新築住宅の大半を環境配慮型にする政策目標も掲げられています。
また、世界グリーンビルディング協会のデータによれば、こうした住宅はエネルギー消費を30%、水使用量を50%削減できるとされ、環境と家計の両面でメリットがあります。
これからの住宅は、環境への配慮を前提とした「共生型」であることが、「当たり前の価値」として求められる時代へと移行しつつあるのです。
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