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住宅設計海外の住宅間取り

2025.06.13

「ブルガリアの住宅探訪」急成長する住宅市場と伝統住宅の魅力

「ブルガリアの住宅探訪」
急成長する住宅市場と伝統住宅の魅力

 

ブルガリアといえば「ヨーグルト」の印象が強いかもしれませんが、実は長い歴史と多様な文化が息づく魅力的な国なのです。
そんなブルガリアの住宅事情や伝統的な間取りには、日本とは異なる独自の特徴があります。
今回のブログでは、ブルガリアの不動産市場の動向から、民族復興期に発展した美しい住宅の構造や生活様式までを詳しくご紹介します。
東欧の異国の暮らしぶりを知ることで、新たな住まいのヒントが見つかるかもしれません。

(1)ブルガリアの住宅市場と価格動向

ブルガリアの住宅市場は、近年安定した成長を見せており、2025年の見通しでは年間約4%の価格上昇が予測されています。
特に主要都市であるソフィアとヴァルナでは価格の上昇率が5~7%と顕著です。
また、ブルガリアのビーチ沿いの不動産価格は、年間6~8%という驚異的な収益を生み出しています。
このような成長にもかかわらず、ブルガリアの不動産価格は依然として西ヨーロッパ諸国と比較して大幅に低く、投資家にとって魅力的な市場ともなっているようです。
各地域別に詳しく見てみましょう。

【ソフィア(首都)】

首都ソフィアは国内最大の住宅市場を持ち、経済活動の中心地として安定した成長を遂げています。
特に大学地区のエリアは学生向け賃貸住宅(マンション・アパート)の需要が高く、オーナーに安定した収入をもたらしています。
首都の開発プロジェクトも活発で、プロフェッショナル層や国際企業の進出により住宅需要が支えられています。

【ヴァルナ(黒海沿岸)】

「夏の首都」とも呼ばれるヴァルナは、黒海沿岸の主要都市として観光業と住宅市場が密接に関連しています。
特に北欧からの別荘購入者の需要が高く、観光シーズンには短期賃貸市場が活況です。ビーチ沿いの不動産価格は年間6~8%という驚異的な収益を生み出しています。

【ブルガス(黒海沿岸)】

ブルガリア第4の都市であるブルガスも、ヴァルナに次ぐ黒海沿岸の重要な住宅市場です。外国人観光客と国内の海岸別荘需要により、黒海リゾートの不動産価値が高まっています。中央駅とバスステーション周辺は夜間の治安に注意が必要ですが、日中は比較的安全であり、ビーチリゾート観光地としての魅力が住宅価格を支えています。

ブルガリアの主要都市や観光地では、上記内容のように価格上昇が顕著です。
例えば、首都ソフィアや黒海沿岸の都市ヴァルナ、ブルガスなどが人気で、以下のような価格水準となっています。

・ソフィア:【アパート】1,893(レフ/㎡) 【戸建て価格】1,623(レフ/㎡)
・ヴァルナ:【アパート】1,436(レフ/㎡) 【戸建て価格】1,288(レフ/㎡)
・ブルガス:【アパート】1,142(レフ/㎡) 【戸建て価格】1,129 (レフ/㎡)
・地方都市:【アパート】600~1,200(レフ/㎡) 【戸建て価格】200~800(レフ/㎡)

上記のようにブルガリアでは首都やリゾート地が高値を維持しており、アパート全体の平均値は約1,423レフ/㎡、戸建て住宅の平均値は約805レフ/㎡です。

※1レフ=83.52円(2025年6月時点)

(2)ブルガリアの伝統的住宅の間取りと特徴

ブルガリアの伝統的住宅

ブルガリアの伝統的住宅は、主に18世紀から19世紀にかけて発展した「民族復興期」の建築様式に由来します。
この時期は、オスマン帝国からの独立を果たし、国家の誇りや経済発展が進んだ背景があります。

【民族復興期の特徴とデザイン】

この時代の住宅は、西欧やバロック、トルコ風の要素を取り入れた華やかな装飾が特徴です。白い壁と黒い木組みが調和した外観に、屋根は樹皮葺きや赤瓦を用いています。
ファサードには大きな窓や装飾が施され、ひとつひとつの家に個性が光ります。
その外観は、中世ヨーロッパの住宅を思わせる趣きがあります。

【間取りと構造の特徴】

民族復興期の住宅の基本構造は、1階(または半地下部分)に「マザ」と呼ばれる大きな収納や倉庫があります。
この「マザ」は食料や道具の保管だけでなく、作業場としても使われるため、大規模な住宅では複数の部屋にわかれることもあります。
居住スペースは2階以上に配置されており、外階段を利用して直接2階に上がる形式が一般的です。
素材は、1階部分が頑丈な石造り、上階は木造になっていることが多く、石の基礎の上に木の居住空間を載せた構造となっています。

【オーバーハングと間取りの工夫】

18世紀から19世紀にかけて建てられた住宅には、2階や3階が1階よりも張り出している「オーバーハング」デザインも見られます。
居住階は、中央に家族が集う広間(リビング的な空間)があり、その周囲に寝室や食料庫、ベランダ(テラス)などが配置されています。
室内は小さな部屋が点在し、多くは窓が大きく、明るく開放的な印象を与えます。

【時代背景と特色】

これらの住宅は、オスマン帝国時代の影響を受けつつも、バルカン半島のスラブ民族の伝統的建築スタイルを反映しています。
日本の住宅との大きな違いは、垂直方向に機能が分離している点と、石造りの基礎、外階段による直接2階アクセス、そして大きな窓や開放的なベランダです。

ブルガリアに今も残る伝統的住宅は、ブルガリアの歴史と文化を今に伝える貴重な建築遺産として、今なお人々を魅了し続けています。

まとめ

ブルガリアの住宅事情は、経済成長と観光需要の高まりを背景に、主要都市やリゾート地を中心に価格が上昇し続けています。
首都ソフィアや黒海沿岸のヴァルナ、ブルガスでは、手頃な価格と安定した需要が投資家や移住者にとって大きな魅力となっています。
一方、伝統的な住宅には、石造の基礎と木造の上階、外階段やオーバーハングなど、歴史や地域性を色濃く反映した独自の工夫が見られます。
現代的な利便性と、長い歴史に育まれた住文化が共存するブルガリアの住まいは、暮らし方や価値観の多様性を感じさせてくれる存在です。

参考: