（1）急成長を遂げるブラジルの住宅市場

ブラジルの住宅市場は、コロナ禍以降、堅調な成長を続けています。2024年の市場規模は9兆3600億円に達し、これは日本の不動産投資額の約3倍に相当します。
さらに2029年には11兆7600億円規模にまで成長すると予想され、年平均成長率は5.40%と高い水準を維持する見込みです。

この成長を支えている要因の一つが、政策金利（SELICレート）の段階的な引き下げです。住宅ローン金利の低下により、住宅購入意欲が高まっていることが見て取れます。
また、政府による低所得者向け住宅支援プログラム「Minha Casa, Minha Vida」の継続的な実施も、市場の安定に貢献しています。

また、2025年1月のデータによると、一戸建て住宅の全国平均価格は1平方メートルあたり約22万円ですが、都市部などの最高価格帯では約25.7万円に達します。
一方、マンションの価格は約34.5万円/㎡となっています。このように、ブラジルの住宅市場は地域や物件タイプによって価格差が大きく、特に高級物件は高額になる傾向があります。

最近の住宅建築では、環境意識の高まりを受けて、エコフレンドリーな建材の使用や太陽光発電、雨水再利用システムの導入が進んでいます。
今後も、政府の住宅政策やインフラ整備の進展に伴い、ブラジルの住宅市場はさらなる拡大が見込まれています。特に、都市部の再開発プロジェクトや新規住宅供給計画に注目が集まっています。

（2）住宅の特徴：日本との違いから見る住宅文化

レンガ造りの外壁に鉄格子付きの窓、そして高い塀と監視カメラ。一見すると物々しく感じるかもしれませんが、これらはブラジルの住宅でよく見られる特徴です。
日本の住宅とは異なる点が多いブラジル住宅ですが、そこには独自の文化や気候に根付いた魅力が詰まっています。
ここでは主な特徴を何点か紹介します。

図：サンパウロの賃貸マンション3LDKの間取り図「ピエトロ・マスカニ」より作成

1. 広々とした開放的な間取り

ブラジルの住宅は、日本の住宅に比べて広々とした間取りが特徴です。平均床面積は日本よりも広く、ゆったりと空間を使っていることが分かります。
玄関という概念はなく、ドアを開けるとすぐにリビングが広がる開放的な設計が多いのも特徴です。

2. 充実した水回り設備

ブラジルでは、トイレとシャワールームの数が多いことも特徴です。80㎡程度の物件でも、最低2つずつ設置されているのが一般的です。特に、主寝室に専用のトイレとシャワーが付いたスイートルームは憧れの的となっています。

また、洗濯機置き場も日本とは異なり、キッチンの近くに設置されることが多いです。「Tanque（タンキ）」と呼ばれる掃除用の水道と洗濯板が一体になった設備も特徴的です。

3. 高いセキュリティ意識

ブラジルでは、セキュリティ対策が住宅設計において重要な要素となっています。窓には鉄格子が設置され、塀の上には有刺鉄線や監視カメラが設置されていることも珍しくありません。

4. 家族や友人との時間を大切にするための空間

ブラジル住宅には、バルコニーや小さな庭「ペティット」が付いていることが多く、家族や友人との時間を過ごすための大切な場所となっています。
バルコニーでバーベキューを楽しんだり、庭先にハンモックを吊るして昼寝を楽しむのは、ブラジル人の日常風景です。

このように、ブラジルの住宅は日本の住宅とは異なる点が多いですが、開放的な空間、充実した水回り設備、高いセキュリティ意識、そして家族や友人との時間を大切にするための工夫が凝らされています。

まとめ

ブラジルの住宅市場は堅調な成長を続けており、多様な住宅設備や独自の特徴を備えた国として注目されています。
政策金利の引き下げや政府の住宅支援プログラムが市場を後押しし、さらにエコ技術の導入も進んでいることから、今後もさらなる成長が期待されています。
広々とした間取りや高いセキュリティ、家族や友人と共に過ごすためのゆったりとした空間は、ブラジルの住宅がその文化を色濃く反映しています。
日本の反対側に位置するブラジルのライフスタイルを知ることで、異国の魅力を感じるだけでなく、日常生活に新たなアイデアを取り入れるきっかけとなれば幸いです。

参考:

• ブラジルの商業用不動産市場規模・シェア分析：成長動向と予測（2024年～2029年）
• ブラジル: 住宅価格と価格/平方メートル
• ブラジル生活入門