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住宅設計海外の住宅間取り

2025.01.17

「フィンランドの住宅探訪」世界一幸せな国の住宅デザインの魅力

「フィンランドの住宅探訪」
世界一幸せな国の住宅デザインの魅力

 

国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が発表した「世界幸福度報告」によると、「2024年世界幸福度ランキング」第1位は7年連続でフィンランド(幸福度スコア7.741)でした。
2位はデンマーク(幸福度スコア7.583)、3位はアイスランド(幸福度スコア7.525)と、北欧諸国が上位を占めています。
一方で、日本は51位(幸福度スコア6.060)と、これらの国々と大きな差が見られます。

フィンランドは寒さの厳しい土地柄でありながら、世界一幸福度が高い国とされています。その秘密の一端は、住まいの特徴にあるのかもしれません。
今回のブログでは、日本とは異なる視点で設計されたフィンランドの住まいについて、最新の住宅事情と間取りの特徴を探り、その魅力と実用性を深掘りしていきます。

 

(1)フィンランドの住宅事情と家賃補助制度の魅力

 

1. フィンランドの住宅事情

近年、フィンランドの住宅市場は大きな変化を見せています。特に2022年をピークに、フィンランドやデンマークでは住宅価格が下降傾向にあります。
この背景には、各国での政策金利の引き上げが影響しています。

フィンランドでは、住宅ローンの約95%が変動金利であり、金利の上昇が市民にとって住宅購入のハードルを高める要因となっています。
また、インフレ率が政策目標を上回る状況が続いており、さらなる金利引き上げの可能性も指摘されています。そのため、住宅ローンの金利負担が家計に重くのしかかるリスクが存在しています。

ヘルシンキの賃貸住宅市場を見ると、2019年築の75㎡(2LDK、サウナ・ガラス張りバルコニー付き)のアパートでは、月額1,120ユーロ(約174,720円:駐車場1台分・水道代込み)が一般的な賃料となっています。
また、フィンランド全体の住宅価格の中央値は1㎡あたり2,941ユーロ(約475,000円)で、日本の平均価格(約313,000円/㎡)と比較して、一戸建て住宅の価格がかなり高いことが分かります。

2. フィンランドの家賃補助制度

フィンランドの住宅事情で注目すべき点は、「家賃補助制度」の存在です。
この制度により、一戸建て住宅だけでなく、条件を満たす住民は市営住宅に住むことができ、家賃負担を大幅に軽減することが可能です。

家賃補助制度は、低所得世帯や学生、労働者、失業者など、幅広い層が対象となっています。
補助金額は世帯の収入、家賃額、住居の立地(地域ごとのコスト)に基づいて決定され、一般的には家賃総額の約80%が補助の基準となっています。この仕組みは、フィンランドの高い家賃に悩む住民や高齢者にとって非常に有意義なものです。
フィンランドの家賃補助制度は、高福祉国家の象徴ともいえる政策であり、すべての市民に住居という基本的な生活要素を保障する重要な役割を果たしています。


(2)フィンランドの住宅間取りの特徴

フィンランドは自然豊かな国であり、人々は自然との共生を大切にしています。
そのため、住宅設計には自然光を最大限に取り入れたり、自然素材を使用したりと、自然との調和が意識されています。
以下に、フィンランドの住宅間取りの主な特徴をまとめました。


フィンランドの住宅間取り図

1. 玄関

フィンランドの玄関は広々とした設計が一般的です。
コートを収納するクローゼットがあり、機能的なスペースが確保されています。また、靴を脱いで家に入る習慣がありますが、日本のような段差はなく、玄関マットで靴を脱ぐシンプルなスタイルです。

2. オープンプランのリビングエリア

リビング、ダイニング、キッチンが一体となった開放的な空間が主流です。リビングには暖炉が設置されており、家族が自然と集まり、温かいコミュニケーションを育む場所となっています。

3. 高密度の断熱材

厳しい寒さが特徴のフィンランドでは、断熱性が非常に重要です。壁や床には約200mm、天井には300mm以上の高密度断熱材が使用され、室内を快適な温度に保ちます。

4. 大きな窓

北欧の冬は日照時間が極端に短く、寒さも厳しいため、窓は自然光を取り入れる重要な要素です。フィンランドの住宅では大きな窓が多く設けられ、三重ガラスが一般的です。また、大きなピクチャーウィンドウと小さな換気窓を組み合わせたデザインが特徴です。

5. サウナ

フィンランドの住宅には、必ずと言ってよいほどサウナが設置されています。サウナは単なる入浴施設ではなく、家族や友人とリラックスできる空間としても活用されています。これは、日本のお風呂に相当する文化的な要素と言えます。

6. バルコニー

最近のトレンドとして、ガラスバルコニーが注目されています。バルコニーの手すりより上に開閉可能なガラス扉を設置したもので、特に戸建て住宅で人気です。バルコニーにはテーブルや椅子を置き、第二のリビングとして利用されます。

日本の住宅が室内と外部を明確に分ける傾向にあるのに対し、フィンランドの住宅は自然と一体となった空間づくりが重視されています。これにより、居住者は自然とのつながりを感じながら、快適な暮らしを送ることができます。

まとめ

フィンランドの住宅は、自然との調和や厳しい気候に適応する工夫が随所に見られます。広々とした玄関やオープンプランのリビング、優れた断熱性能、大きな窓、そしてサウナやガラスバルコニーなど、日本とは異なる視点で快適性を追求した間取りが特徴です。
これらのデザインは、居住者にとって心地良いだけでなく、家族や友人と過ごす時間を豊かにするための空間デザインとなっています。
また、フィンランドの家賃補助制度は、高福祉社会を支える重要な要素であり、住まいに対する多様な考え方や可能性を再認識させてくれます。
日本の住宅デザインに新たな視点を取り入れるヒントとして、フィンランドの事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

参考:

平面図参考:「第4回 フィンランドの住宅とサウナ」より