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2025.05.23

世界の驚きの狭小住宅 ミニマルライフと小空間アイデアを徹底解説

世界の驚きの狭小住宅 
ミニマルライフと小空間アイデアを徹底解説

「世界の狭小住宅って、どこまで狭く住めるの?」そんな疑問をお持ちの方へ。
今回のブログでは、ポーランドの“世界一狭い家”Keret House、デザイン性の高いパリの13平米ワンルーム、アメリカで話題のタイニーハウスなど、世界各地のユニークな狭小住宅を詳しく紹介します。
それぞれの住まいに込められた驚きの工夫や、空間を最大限に活かすポイントも分かりやすく解説します。
これを読めば、狭小住宅に対するあなたのイメージは一変し、新しい住まいの可能性を発見できるでしょう。

(1) ポーランドのKeret House

ポーランドのKeret Houseは、2つの既存建物の間に挟まれた隙間に建設された世界で最も狭い家として知られています。
この家は、建築事務所Centralaの建築家ヤクブ・シュチェンスニー氏によって設計されました。
狭い路地につくったこの狭小住宅は、最も狭い部分で92cm、最も広い部分で152cmです。
内部の幅は72cmから122cmの間で変化します。
床面積については情報源によってばらつきがあり、4.09㎡、14㎡、14.5㎡などとされています。

下の写真にあるように2階建てで、全長は約12メートル、高さは約9.1メートルです。
内部は、1階にはトイレとシャワー、シンクと食器棚のあるキッチン、2人掛けのテーブル、ビーンバッグソファがあります。
金属製のはしごで2階へ上がると、ほぼダブルサイズのベッド、テーブル、椅子があります。この家には窓はなく、代わりに光を取り込むために穴の開いた鋼鉄製のファサードが使用されています。
室内は白で統一され、空間の広がりを感じさせます。
電力は隣接する建物から供給されおり、水道はカスタムメイドの上下水道システムを備えています。

実際にこの建物を設計した建築家のヤクブ・シュチェンスニー氏は、最初はこんな狭小住宅に住めるはずがないと言っていたらしいですが、実際につくってみると、意外と住めることに気がつき同時に、この建物は住居としての可能性を広げた語っています。
この狭小住宅は現在、ポーランドの建築基準を満たしていないため「芸術インスタレーション」として分類されており、旅行中の作家や芸術家のための一時的な住居と創造的なワークスペースとして機能しているようです。

ポーランドの狭小住宅

(2)フランスの13平米ワンルーム物件とは?

最近、日本の狭小住宅から着想を得てパリに作られたという13平米のワンルームが話題になっています。

この狭小住宅は、パリ16区、セーヌ川近くのニューヨーク通りに位置するオスマン様式の建物の最上階。かつて家政婦が使用していた小部屋を改装したものです。
この物件映像は、ルームツアー動画としてYouTubeに投稿され、「素晴らしい設計」「とても素敵」と話題になっています。

デザインは、シャイエブ & パラディのポーリーヌ パラディ氏とサラ シャイエブ氏によるものです。
話題になっている理由は13㎡(約3.9坪)という非常に狭い空間にリビング、キッチン、バスルーム、そしてロフトの寝室という、住居に必要な機能を全て詰め込みつつ、狭さを感じさせない工夫が随所に凝らされている点です。
このデザインを見ると、狭小住宅にあるたくさんの工夫が見られ、注文住宅をお願いするときの参考にもなります。

以下に主なポイントを整理しました。

■スペースの有効活用

ロフトベット:
通常のベッドを置くと部屋が狭くなりますが、ロフトベッドにすることで、下の階をリビングスペースとして確保しています。

多機能デイベッド:
ソファ、ベッド、収納の3役をこなす家具を配置することで、スペースを有効活用しています。

壁面収納:
壁面を最大限に利用した収納スペースを設けることで、物が散らからず、部屋を広く見せています。

■視覚的な工夫

ミラーの活用:
鏡を意図的に配置することで、部屋に広がりを持たせています。

自然光の取り込み:
天窓や窓から自然光を多く取り入れることで、開放的で明るい空間となっている。

■機能性

一体型キッチンとバスルーム:
狭いスペースに、必要な機能を効率的に配置しています。

洗濯機スペースの確保:
バスルーム内に洗濯機置き場を設けることで、生活に必要な機能をコンパクトにまとめています。

■色彩

素材と色使い:
明るい木材や白を基調とした内装に、アクセントカラーを取り入れることで、狭さを感じさせない、温かみがありつつもモダンな雰囲気を演出しています。

この狭小住宅は、非常に限られた空間にもかかわらず、多くのアイデアと省スペースデザインを通じて、基本的な生活機能を組み込むことに成功していると言えます。

フランスの狭小住宅

You Tube:https://youtu.be/tpdH9x_74XA?si=NkcWrQvkK_OQANit

(3)アメリカの小さな家「タイニーハウス」

アメリカでは「タイニーハウス」と呼ばれる小型住宅が徐々に人気を集めています。
従来の「大きいことは良いこと」という価値観とは対照的な動きであり、多くの人々がよりコンパクトでシンプルな生活を求めるようになって来ています。

小さな家(狭小住宅)、いわゆるタイニー(Tiny:小さな)ハウス(house:家)は、一般的には10~40㎡(約100~400平方フィート・一般の家の面積の約6分の1以下)程度の住宅として定義されており、2007~2008年の金融危機の頃に初めて登場しました。

タイニーハウスの種類は基礎があり土地に固定された定置型タイニーハウスと、車で牽引して移動可能なトレーラー型タイニーハウスがあります。
価格は建物のみで約13,000ドル(約190万円)から、土地付きで総額280,000ドル(約4000万円)以上になる場合もあります。

「タイニーハウス」のメリットとデメリットを下に整理しました。

■メリット

・家賃や住宅ローンの負担を減らせる。
・光熱費、固定資産税、メンテナンスコストが低い。
・小さな家はエネルギー効率が高く、建材も少なくて済む。
・太陽光発電や雨水利用などのエコ技術との相性も良い。
・好きな場所へ移動できる。
・災害時の利用や高齢者の住まいとして活用できる。

■デメリット

・居住スペースが非常に小さいため、物を減らす断捨離は必須。
・プライベートスペースが限られ、家族やパートナーと密接な生活になる。
・移動式の場合、牽引や車検などの手続き・メンテナンスが必要。
・既製品の選択肢が少なく、セルフビルド(自作)する人も多い。
・法規制や設置場所の制限がある場合もある

アメリカのタイニーハウス

タイニーハウスと日本の狭小住宅には、立地やライフスタイルの面で大きな違いがあります。
特に土地付きのタイニーハウスは、広大な郊外や山林などに建てられることが多く、日本の都市部に密集して建てられる狭小住宅とは趣が異なります。

アメリカでは、移動可能なトレーラー型のタイニーハウスが主流であり、単なる「小さな家」ではありません。
ミニマルな暮らしを志向する人々に支持されており、限られた空間の中で、自由で持続可能なライフスタイルを実現するための住まいとして注目されています。

まとめ

世界各地の狭小住宅、いかがでしたか?
ポーランドのKeret Houseは、極限までの狭さを追求した建築物として、住居の可能性を問いかける挑戦的な事例でした。
一方、パリの13平米ワンルームは、限られた空間を最大限に活用する洗練されたデザインで、都会でのスマートな暮らしを提案しています。
そしてアメリカのタイニーハウスは、ミニマルライフを実現するための手段として、自由で持続可能なライフスタイルを体現していました。
それぞれの狭小住宅は、単に「狭い」というだけではなく、住む人の価値観やライフスタイルを反映した、ユニークで魅力的な空間ばかりでした。
どんなに空間が限られていても、発想やデザイン次第で快適に暮らせることが、世界の事例から伝わってきます。

参考: