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2023.11.27

「韓国の住宅探訪」マンションから半地下まで、韓国式間取りに迫る

「韓国の住宅探訪」
マンションから半地下まで、韓国式間取りに迫る

韓国は日本から飛行機で2時間あまり。時差もなく、外国の中でも韓国は、身近なイメージのある方が多いのではないでしょうか?
そんな“ご近所”の韓国ですが、住宅事情は日本と大きく異なるようです。

このブログでは、韓国の住宅事情とその特徴的な間取りに焦点を当て、韓国の日本と異なる住まいの現況やマンションの間取りについて探ります。
また、韓国のと言えば、映画『パラサイト』で描かれた半地下住宅についても取り上げ、韓国独特の住まいの風景に迫ります。
韓国の住宅文化や住宅の現況に興味がある方は、ぜひこのブログをお読みいただき、多様な住まいの世界を垣間見てください。

(1)【最新】韓国の住宅事情

韓国のマンション群

韓国の住まいの形態は、主に「アパート」、「ヴィラ」、「単独住宅」、「多世帯住宅」、「オフィステル」と言ったものに種別されます。

圧倒的に人気があるのは「アパート」で、これは日本で言うマンションにあたります。
「ヴィラ」は、「アパート」よりも低層(概ね4階建て)のマンション。
「単独住宅」は戸建て住宅、「多世帯住宅」は、ひとつの建物に2世帯以上が住めるよう、住居空間が分離されている住まいです。
「オフィステル」とは、ワンルームタイプの住まいで、一人暮らしや事務所としても利用されています。

韓国の住宅購入者の多くはアパート(日本で言うマンション)を購入しており、ソウルや釜山といった人気エリアには高層マンションが建ち並び、中には100階建ての超高層マンションもあります。

韓国の場合、人口の4分の1(約1000万人以上)が首都であるソウルを含めた周辺の市に住んでいます。
ソウルはビジネスの中心であり、観光スポットもたくさんあります。
そのため、ソウルにある住居は、東京23区にあるような一戸建ての住宅は少なく、ほとんどの人は集合住宅に住んでいます。
ソウル郊外まで行くと、一戸建て住宅があります。それらの中には、伝統的な建築様式の韓屋(ハノク)もあります。

韓国で家を買うというと大体がマンションを購入するというのが一般的です。

なぜなら、韓国は日本よりも土地面積が狭く、住まいとしては一軒屋よりも3LDKや4LDKなどファミリータイプのマンションが主流だからです。
マンション価格は、「在韓日本人に聞いた深刻なマイホーム事情」によると、中古で5億ウォン(日本円で約5,000万円)程度で、新築だと10億ウォン(日本円で約1億円)以上と、東京都心のタワーマンション価格と同様、かなり高い買い物になります。

また、韓国の持ち家率に関しては、2015年~2020年の6年間では、55.5%~56.3%で推移しています。
これは、日本(2020年で61.2%)に比べて低い数値と言えます。

そして、韓国には独自の「賃貸システム」が確立されています。名称は、「チョンセ」と「ウォルセ」と呼ばれるシステムです。
「チョンセ」とは、入居時にまとまった「保証金」(高額な敷金)を支払うことにより「月々の家賃」を支払うことなく生活でき、且つ、退去時に「保証金」(敷金)全額を返金されるというシステムです。
これは、ある程度まとまったお金があれば「居住費」が掛からない韓国独自の賃貸システムです。

そして、「ウォンセ」は入居時に「保証金」(敷金)を払い、月々の家賃を支払う、日本と同様の賃貸システムです。退去時には「保証金」(敷金)は全額返金されます。

最近では、最近の不動産価格の高騰により、「チョンセ物件」は少なく、ウォンセの賃貸マンションが多いようです。

 

(2)韓国のマンション間取りの特徴

資料によると、韓国の全人口は約5,156万人となっており、その中でソウルの人口は約965万人です。
全人口の18.7%がソウルに住んでいることになります。
これは、東京に2350万人も住んでいるというレベルになります。
ソウルの面積は605.2km2ですので、世界的にも人口密度が高い都市と言えるでしょう。
ソウルは人口密の為、建物も高層化しているのです。

そして、2020年の人口住宅総調査(韓国統計庁公表)によると、韓国の住宅総数1853万戸のうち、62.9%がマンションで占められています。いかにマンション住まいが多いかを示しています。

(※ちなみに、日本の「平成30年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」によると、日本の戸建ての総数は2,594万7,900件で、対して、マンションの総数は569万6,200件となっています。
割合で言えば、マンションは戸建ての約21%で、日本では圧倒的に戸建て住宅がが多いのです。)

ここでは、韓国の一般的な住まいであるマンションの間取りの特徴、5つを整理しました。

韓国の住宅間取り図

上記図は、「どうなっているの? 世界のマンション事情 〜韓国編〜」より引用、作成しました。

(特徴.1)オンドル(床暖房)がある

韓国の伝統的な暖房方法であるオンドルとは、床下や壁の中に配管を通し、熱風や蒸気を送ることで床全体を暖める床暖房のことです。
韓国では、このオンドルが一般的で、足元から暖められるので、冬の寒さが厳しい韓国ならではと言えるでしょう。
また、マンションも下の平面図を見てもわかるように、外気を取り込む大きな窓がありません。
窓は二重窓で外観の美観や排ガスからの保護、冬の防寒のために部分に組み込まれたデザインです。
外気の侵入を最小限に抑え、床暖房にすることで寒い冬でも快適に過ごすことが出来るのでしょう。

(特徴.2)リビングが中心の間取り

韓国の間取りの特徴と言われるのが、玄関開けたらすぐにリビングがあること。
そして、リビングを囲むようにキッチンや各個室が配置され、すべての部屋がリビングに接しているところです。
リビングに個室がつながっており、ドアを開けたらリビングに出るという配置が面白いところです。
これは、家族中心主義、家族のコミュニケーションを重視した、家族の絆を大切にする韓国文化の現れとも言えるでしょう。

(特徴.3)部屋のようなバルコニー的なものがある

韓国は冬場には-20℃という寒さです。その為、テラスやバルコニーを設置すると、室内の暖気が逃げてしまいます。
上の平面図でバルコニーとなっているところは、外気に触れる場所というより、ひとつの部屋の中に組み込まれた場所、仕切られたベランダ的なものでしょう。
ここに洗濯器を置き、洗濯物を乾かすというのが一般的です。

(特徴.4)バスタブとシャワー室、洗面台、トイレがひとつの部屋に

上の平面図を見てわかるように、「バス、シャワー」、「洗面台」、「トイレ」が一体化しており、2箇所あるのも特徴の一つです。

日本の場合は水回り(キッチン、バス、トイレ、洗面)をひとつのエリアに集中させるのが一般的ですが、韓国は各寝室から、より近い場所に「シャワー&トイレ室」をそれぞれ配置すべきという考えがあります。
さらに、トイレ&シャワー、洗面台を一体化させることで、スペースを最小限に抑え、その分、寝室など居住空間を広くすることでバランスをとっています。
シャワーを浴びたり、トイレを使ったりする場所がマンションで2箇所あれば、家族の間でバッティングすることも少ないでしょう。

(特徴.5)廊下が少ない

韓国住宅の間取りでは、廊下が少ない傾向があるようです。
韓国のマンションの間取りは、玄関から直接リビングへと続くことが多いため、廊下がありません。
そのため、玄関からリビングまでの距離が短く、空間を有効に活用しています。廊下面積を減らすことで、リビングや寝室などの居室の面積を大きくしています。

 

(3)映画パラサイトで有名になった半地下住宅とは

韓国の住宅で思うのは、2019年の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』です。
この映画は、狭く薄汚れた半地下アパートに住む家族のブラックでコミカルで生々しく、意外性に富んだ作品として記憶に新しいですね。

この映画に出てきた半地下は、1970年代に北朝鮮からの空爆に備えて、建築基準法で地下室の設置が義務づけられたことがきっかけで普及しました。
その後、1980年代に入り、ソウルへ人口流入が急増したことから、半地下住宅は、低所得者層の居住場所として利用されるようになりました。

韓国統計庁の調査によると、2022年末時点で韓国の半地下住宅は約12万戸で、そのうちの約7割がソウル市に集中しています。
半地下住宅には、通常、リビングルーム、寝室、キッチン、バスルームがあります。
また、半地下は住宅としてだけではなく、小さなオフィス、店舗、美容室、カフェなどの商業スペースとしても使用されています。

半地下住宅は、地上の住宅に比べて家賃が安いことが最大のメリットです。デメリットは、地上の住宅に比べて日当たりが悪く、湿気が溜まりやすいというところでしょう。
さらに半地下住宅は、半分が地下ということで、映画にもありましたが、雨水の侵入があります。
2022年8月8日にソウルで発生した集中豪雨では、多くの半地下住宅が浸水するという被害が相次ぎました。
この被害を受け、ソウル市は新たな半地下住宅の建設を禁止し、既存物件についても段階的に廃止する方針を発表しています。

韓国では、この半地下住宅は減少すると思いますが、依然として多くの韓国人がこの半地下で暮らしているという事実があります。
半地下住宅は、韓国の経済格差、貧困の象徴ともなっています。

 

まとめ

韓国の住すまいは主にアパート、ヴィラ、単独住宅、多世帯住宅、オフィステルが一般的な内容です。
韓国では、特にアパート(日本で言う高層マンション)が人気で、ソウルには高層建築が目立ちます。
持ち家率は日本より低く、賃貸形式には「チョンセ」と「ウォンセ」があり、賃貸契約には高額な敷金が必要です。また、マンション価格も高いと言えます。
韓国の間取りで特徴的なところは、オンドル(床暖房)の使用が一般的であるということと、さらに家族コミュニケーションが重視された、リビングが中心となっているところでしょう。

 

参考: