
「エジプトの住宅事情」
砂漠の国に息づく独特な住まい文化
エジプトの住宅事情は、人口増加や都市開発によって大きく変化しています。
近年、不動産市場が急成長し、新たな都市計画も進められていますが、一戸建て住宅の間取りには、古くから受け継がれてきた独自の特徴が色濃く残っています。
今回は、エジプトの住宅市場の動向と、一戸建て住宅の間取りの特徴について詳しく解説します。
多世代が暮らしやすい設計や、気候に適応した建築スタイル、イスラム文化の影響など、日本の住宅とは異なるポイントを知ることができます。
エジプトの住宅事情を知ることで、異文化への理解が深まり、海外の住宅設計のアイデアを得ることができるかもしれません。
(1)急成長するエジプトの住宅市場:人口増加と新たな都市開発
エジプトの住宅不動産市場は、経済成長と人口増加により、価格上昇が続いています。
特にカイロやアレクサンドリアといった大都市では、高まる住宅需要が注目されています。
また、高級住宅市場も急成長しており、2026年までには市場規模が2倍になると予測されています。
エジプトの人口はすでに1億人を超えており、2050年には1.6億人、さらに2100年には2億人を超えると見られています。
この増加ペースは驚異的で、日本の高度成長期の約2倍のスピードです。
エジプトの国土は95%が砂漠のため、都市部に人口が集中し、過密状態が続いています。
このため賃貸住宅の需要が高まり、不動産価格はまさに日本のバブル期のように高騰しています。
また、首都カイロの過密問題を解消するために、新行政首都(ニューキャピタル)への移転プロジェクトが進められています。
このプロジェクトは、外国人に対する不動産の規制緩和が進んでおり、投資機会が増えているようです。
さらに、エジプト政府は「エジプト・ヴィジョン 2030」という戦略を掲げ、生活の質の向上、持続可能な環境の実現、国家財政の安定、イノベーションの促進などを目指しています。
この戦略に基づいたインフラ整備は、新しい住宅やマンションの建設、環境整備に好影響を与えています。
エジプトは人口増加による住宅需要と供給のバランスを未来像に合わせて計画的に進められており、その取り組みは評価に値すると言えるでしょう。
(2)エジプトの一戸建て住宅の間取りの特徴
エジプトの一戸建て住宅は、古代から現代に至るまで大きな変化はなく、伝統的な様式が受け継がれているようです。
基本的に多世代家族を想定して設計されており、二世帯・三世帯住宅が一般的です。
特に、子どもが結婚した際に増築できるよう、あらかじめ建築構造が工夫されています。
また、乾燥した気候に適応するため、日干しレンガや小さな窓が採用されることが特徴です。

※上の図は『FazWaz』からエジプトの不動産サイト物件より特徴的な1階の間取りのみを作成した。
2階には3ベットルームと1.5バスルームがある。
以下にエジプトの住宅の間取りの特徴をまとめました。
2-1 拡大家族を想定した設計
エジプトの住宅では、建物の上部に鉄筋が露出していることがよくあります。
これは建築途中ではなく、将来的に増築しやすいように設計されているためです。
多くの家庭では、子どもが結婚すると新しい家を建てるのではなく、既存の住宅を増築する形で世帯を拡張しています。
2-2 複数のリビングスペース
エジプトの住宅は、間取り図にもあるように、公式な来客用のリビング(サロン)と家族用のリビング(マジュリス)の2種類があることが一般的です。
これらのリビングは広々としており、天井が高く、開放感のあるデザインが採用されています。
2-3 平らな屋根の活用
エジプトの住宅では、屋根が平らな構造が多く見られます。
この屋根は、屋上テラスとして利用され、家族が集まる憩いの場や洗濯物を干すスペースとして活用されています。
特に夏の夜には、涼しい屋上で過ごすことも一般的です。
2-4 床に敷かれるカーペット
エジプトの住宅の床には、カーペットやマットが敷かれることが多く、床の冷たさを和らげる役割を果たしています。
さらに、座ってくつろぐ文化が根付いているため、リビングや寝室にも大きめのカーペットが敷かれることが一般的です。
2-5 分厚い壁と小さな窓
エジプトの気候は、昼間は暑く夜は涼しいため、建物の断熱性が重要になります。
そのため、壁は厚く造られ、直射日光を遮るために窓は小さめに設計されています。また、小さな窓には鉄格子が設置されていないことが多く、比較的治安が安定していることを示しています。
2-6 イスラム文化の影響
エジプトの住宅には、イスラム文化の影響が色濃く反映されています。
■プライバシーを重視した間取り
外部からの視線を遮るような設計がされており、女性専用のスペースや家族専用のエリアが確保されることが多いです。
■装飾的なデザイン
壁や扉には、アラビア文字や幾何学模様が施された装飾が多く見られます。さらに、アーチ状の開口部や装飾タイルなどが使われ、エキゾチックな雰囲気を演出しています。
エジプトの住宅は、気候や文化、家族構造を反映した独自の特徴を持っています。
日本の住宅とは異なり、多世代同居を前提とした設計や、暑さを和らげるための建築工夫が随所に見られます。
まとめ
エジプトの住宅は、気候や文化、家族の在り方に深く根ざした特徴を持っています。
急成長する不動産市場の中でも、一戸建て住宅は伝統的なスタイルを維持し、多世代で暮らしやすい工夫が見られます。
例えば、将来的な増築を前提とした構造や、公式・家族用のリビングの使い分け、屋上スペースの活用などが特徴的です。
また、暑さをしのぐための分厚い壁や小さな窓、イスラム文化の影響を受けたプライバシーを重視した設計も重要なポイントです。これらの特徴を知ることで、異文化の住まいへの理解が深まり、住宅設計の新たな視点を得るきっかけとなれば幸いです。
参考:
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