「ウズベキスタンの住まい探訪」
2026年最新の住宅事情と中庭のある住まい
2026年FIFAワールドカップで初出場を果たし、世界中から注目を集めている中央アジアの国・ウズベキスタン。
そこで今回のブログでは、「ウズベキスタンの住宅ってどんな間取りなんだろう? 日本とは何が違うの?」そんな疑問をお持ちの方に向けて、2026年最新の不動産市場や住宅事情、政府の住宅政策、住宅価格の動向、さらに伝統的なウズベキスタンの戸建て住宅「マハッラ」の間取りや住まいの工夫など、詳しく解説します。
海外の住宅を知ることで、新しい住まいづくりの発想が広がるでしょう。
(1)2026年最新ウズベキスタンの不動産と住宅事情
近年、中央アジアの中でも高い経済成長を続けているウズベキスタンは、不動産市場でも注目を集めています。
人口増加や都市化、外国企業の進出、住宅建設の拡大により、住宅需要は年々高まっています。
特に首都タシケントでは新築マンションや再開発が相次ぎ、不動産投資先としての関心も高まっているようです。
ウズベキスタンの住宅市場が注目される理由を見ていきます。
01)ウズベキスタンの住宅事情の現状
ウズベキスタンは2016年のミルジヨエフ政権発足以降、閉鎖的な経済政策から一転し、外貨交換の自由化や外国人投資家向けの環境整備を進めてきました。
2016年に政権が変わったことで経済政策が転換され、投資家の事業に対する政府の介入を減らすなど、外国人投資家が安心して投資できる環境づくりが進められてきました。
その象徴が首都タシュケントで、建築的な外観を残しつつさらに発展させる「新タシュケント計画」のもと、今後もさまざまな施設の建設が予定されています。
人口動態も住宅需要を後押ししています。
ウズベキスタンの人口は3,600万人を超え、2050年には4,500万人を超えると予想されており、平均年齢は27歳と若い働き手が多い国です。全人口の約3割が14歳以下という人口構成は、今後も長期にわたって住宅需要を支える基盤になると考えられます。
現在の住宅事情をみると、全国では2025年1~9月時点で88.1%の世帯が戸建て住宅に居住しており、都市部でも戸建て77.6%、集合住宅22.1%です。
つまり、日本の大都市圏のようにマンション中心の市場ではなく、まだ戸建て優勢の住居構成となっています。
一方で、ADB(アジア開発銀行)の試算によると、ウズベキスタンでは年間14.5万戸相当の新規住宅需要があるのに対し、過去10年の平均供給は年約9万戸にとどまるだろうと予測しており、住宅の量的不足が続いています。
さらに、住宅の「質」の面でも課題があります。ADB資料では、過密居住や住宅更新需要に加え、上下水道など基礎インフラの弱さが住宅政策の論点として示されています。
その一方で供給は増えており、2025年の住宅供給面積は1,590.88万㎡で前年比2.8%増、2026年1~3月は332.21万㎡で前年比6.6%増でした。
建設は着実に進んでいますが、住宅需要の増加がそれ以上に大きく、供給不足はなお続いている状態です。
02)ウズベキスタン政府の不動産における対応
このような現状に対して政府の対応はかなり積極的です。
2026年は住宅ローン原資として総額23兆スム(約3,105億円)を投じる計画で、内訳は予算12.3兆スム(約1,660億5,000万円)、商業銀行7.7兆スム(約1,039億5,000万円)、住宅ローン借換会社3兆スム(約405億円)です。
さらに、頭金・金利負担の軽減に向けて2.7兆スム(約364億5,000万円)の補助を予定し、ローン上限もタシケントで4.8億スム(約648万円)、地方では3.8億スム(約513万円)まで引き上げています。
さらに、2026~2028年の住宅供給計画は14万戸、15万戸、16万戸とされ、量の確保を強く打ち出しています。
※1スム=約0.013円
制度面では、2026年の改革が目立ちます。
まず、本年2026年4月1日から不動産売買の決済は原則非現金化され、エスクロー活用も可能になりました。
これにより透明性向上が期待されます。さらに、7月1日から「ターゲット型住宅貯蓄預金」の試行が始まり、補助金を頭金準備段階から使いやすくする仕組みが導入されました。
住宅取得を「借りる前」から支える設計に変わりつつある点は注目に値します。
エスクローとは:エスクロー活用とは、一言でいうと「買い手と売り手の間に、信頼できる第三者(銀行など)を挟んで安全に決済を行う仕組み」のこと。
ウズベキスタンでは近年、集合住宅の建設ラッシュが続いていますが、それに伴う「持ち逃げ」や「工事の中断」といったトラブルを防ぐために、この仕組みの導入が進められています。
03)2026年の住宅価格・賃料・利回りの実態
2026年現在、住宅価格は全体として上昇基調にありますが、急激な値上がりは落ち着きつつあり、地域によって動きが異なっています。
首都タシケントでは最も価格が高く、中心部では中古マンションでも1㎡当たり約1,000ドル前後、新築住宅はそれ以上で取引されるケースが多く見られます。
地区によって価格差は大きく、高級住宅地ではさらに高額になります。
賃貸市場も活発で、タシケント中心部では平均賃料が約9ドル/㎡前後まで上昇しています。外国企業の駐在員やIT関連企業の進出が賃貸需要を支えています。
投資利回りも比較的高く、ワンルームなど小規模住宅では表面利回り8〜9%程度となる物件もあり、新興国市場としては魅力的な水準です。ただし近年は住宅価格上昇の影響で利回りはやや低下傾向にあります。
一方で、住宅ローン金利は15〜25%程度と依然高く、購入者にとっては大きな負担となっています。そのため、現金購入や海外投資家による取引も一定数存在しています。
ウズベキスタンは今後も人口増加と都市開発を背景に、中長期的には安定した住宅需要が続くと予想されています。
まとめ
ウズベキスタンは中央アジアでも成長性の高い不動産市場として注目されています。
人口増加や都市化を背景に住宅需要は堅調で、政府も住宅供給拡大や都市開発を積極的に推進しています。
特に首都タシケントでは、新築住宅や再開発が進み、不動産価格・賃料ともに上昇傾向が続いています。住宅ローン金利の高さや地域ごとの価格差といった課題はありますが、高い賃貸需要と比較的良好な利回りは投資家にとって魅力です。
今後は「ニュー・タシケント」をはじめとする大型開発や制度改革が市場をさらに活性化させ、ウズベキスタンの住宅市場は中央アジア有数の成長市場として発展していくことが期待されています。
(2)ウズベキスタンの戸建て住宅の間取りの特徴
ウズベキスタンの戸建て住宅は、暑く乾燥した夏と寒い冬、そして来客を大切にする暮らし方に合わせて発展してきた住まいと言えます。
外から見ると閉鎖的ですが、内部には中庭や半屋外空間が広がり、家族の生活が豊かに展開されます。
街路に対しては壁で守り、住まいの中心は家の内側につくる。この発想が大きな特徴です。
01)ウズベキスタンの住宅の種類
ウズベキスタンの昔ながらの標準的な住まいのほとんどは一軒家で、特に敷地の周りを塀で囲み、内側に中庭を設けるタイプが多く見られます。
一家の人数が多いため、日本人から見ると全体的に大きな住宅だと感じることが多いようです。
ウズベキスタンの住宅の種類は、大きく分けると、以下の3つに分類されます。
1. マハッラ住宅(伝統的コミュニティ型戸建て住宅)
「マハッラ」とは、古くから続くイスラームの伝統的な地域コミュニティ、およびそのエリアに建つ一階建て〜二階建ての伝統的な戸建て住宅を指します。
外壁を泥やレンガの強固な塀(デュヴァル)で囲み、内部に豊かなプライベート中庭を持つのが特徴です。今回、解説するのは、この伝統と知恵が詰まった戸建て住宅です。
2. ソ連時代の集合住宅(アパートメント)
1966年のタシュケント大震災後の復興期などに大量に建設された、コンクリートパネル造の無機質な集合住宅です。現在でも都市部では多く利用され、価格も比較的手頃なため人気があります。
3. 近代的な新築マンション・高級コテージ(バンク・ハウスなど)
近年の経済成長に伴い、外資も参入して建てられている近代的な高層マンションや、都市郊外に分譲されるヨーロッパ風のモダンな2階建てコテージです。
02)ウズベキスタンの戸建て住宅(マハッラ)の間取りの特徴
ウズベキスタンの伝統的な戸建て住宅の間取りは、一言で言えば「徹底的な内向型(インサイド・アウト)」です。
外に対しては閉じ、内(中庭)に対して完全に開くという明確なロジックが特徴です。
各居室と暮らしの特徴を詳しく見ていきましょう。
●外観と玄関:街に背を向け、聖なる境界をまたぐ
外から見ると、窓が一つもない高い泥壁やレンガ壁(デュヴァル)が続くのみで、中の様子は一切伺えません。
玄関ドア(門扉)は重厚な木彫りなどの美しい装飾が施されている一方、「あえて扉の開口高さを低く設計する」という独特の風習があります。
これは、家に入る人が自然と頭を下げる(お辞儀をする)形になり、家や住人、そして伝統に対して敬意を払うという意味を持つ、精神性の高い設計工夫です。
●中庭(ホヴリ)とテラス(アイヴァン)が住まいの真の主役
門をくぐると、外の荒涼とした景色から一転、緑豊かなプライベート中庭(ホヴリ)が広がります。ここが生活の中心です。
中庭にはアンズやイチジクなどの果樹が植えられ、中心には「タプチャン(Tapchan)」と呼ばれる、絨毯やクッション(クルパチャ)を敷き詰めた大きな木製の小上がり(高床敷きの台)が置かれています。
夏は、このタプチャンの上で食事をし、お茶を飲み、そのまま夜風に吹かれて眠ります。
また、中庭に面して「アイヴァン(Ayvan)」と呼ばれる深い軒を持った吹き放ちのテラス(縁側のような空間)が設けられ、強烈な直射日光を遮りつつ、室内に心地よい日陰の風を送り込むパッシブデザインが成立しています。
●リビング・ダイニング(メフモンホナ):公私を分ける格式高い空間
ウズベキスタンの家は、伝統的に「イズカリ(内側:家族・女性の空間)」と「タシュカリ(外側:男性・客人の空間)」に緩やかに分かれています。
リビング兼ダイニングにあたる客間は「メフモンホナ」と呼ばれ、家の中で最も広く、最も美しく装飾されます。
壁には「スザニ」と呼ばれる豪華な刺繍布が飾られ、床にはペルシャやトルクメンの高級絨毯が敷かれます。
ここには基本、椅子やテーブルはなく、床に直接「クルパチャ」という細長い敷布団のような座布団を敷き、中央の布(ダスタルハン)を囲んで、大家族やゲストが車座になって食事を楽しみます。
●キッチン:内と外の2つを持つ工夫
伝統的な戸建てでは、キッチンが「室内の近代的なキッチン」と「中庭にある屋外キッチン(竈:プロフなどを炊く大釜がある)」の2つに分かれているケースが多々あります。
夏の酷暑期に室内で火を使うと熱がこもるため、料理は風通しの良い屋外や半屋外のキッチンで行うという、明快な気候適応の工夫です。
●寝室:可変性の高い多目的ルーム
日本のようにつくり付けのベッドフレームを置くケースは伝統的住宅では少なく、寝室の概念は非常にフレキシブルです。
昼間はリビングとして使い、夜になると壁のニッチ(収納用のくぼみ)やチェストから、昼間は畳まれていた「クルパチャ(敷布団)」を引っ張り出して床に並べ、寝室へと早変わりさせます。部屋の用途を限定しない、究極のミニマリズムと可変性があります。
●トイレと浴室(水回り):あえて母屋から離す
伝統的な間取りでは、トイレや浴室などの水回りは、中庭の隅など「母屋から完全に離れた場所」に独立して設置されるのが一般的です。
これは、母屋の居住空間に臭いや湿気を持ち込まないための衛生上の知恵であると同時に、乾燥した気候の中で水回りを外部に切り離すことで建物本体の劣化を防ぐ、実用的な工夫でもあります。
近年では水洗化が進み、母屋に隣接する形へと変化しつつありますが、伝統的な住宅では今もこの「母屋分離」の考え方が色濃く残っています。
まとめ:日本の住宅設計への応用
ウズベキスタンの戸建て住宅には、現代の日本の住宅設計に今すぐ応用できる知恵が詰まっています。
以下の3点は、都市部の狭小地や、近年の日本の猛暑対策において非常に有効なアプローチとなります。
1.「プライベート中庭(ロッジア風)の配置」による、カーテンのいらない暮らし:
日本の住宅は道路面に大きな窓を作り、結局プライバシーのために一日中カーテンを閉めているケースが多々あります。
ウズベキスタンのように「外に閉じ、内に開く」設計を取り入れ、小さな中庭やハイサイドライト(高窓)を組み合わせることで、都市部でも周囲の目を気にせず自然光と風を取り込む開放的な暮らしが可能になります。
2.「アイヴァン(半屋外テラス)」によるパッシブな猛暑対策:
温暖化が進む日本において、夏の直射日光を室内に入れないことは最重要課題となっています。
ウズベキスタンのアイヴァンのように、深い軒を持たせた半屋外のウッドデッキ空間(中間領域)を作ることで、エアコンの負荷を大幅に減らしつつ、心地よい外気を感じるサードプレイスを住宅内に創出できます。
3.「床座と可変性」で見直す、省スペースな子供部屋・寝室:
家具を固定せず、多目的に部屋を使うウズベキスタンのスタイルは、日本の「畳文化」にも通じます。現代の日本の住まいでも、寝室や子供部屋をあえて小上がりの畳スペースやフレキシブルな床座仕様にすることで、将来のライフステージの変化に柔軟に対応できる、無駄のない間取りが実現できます。
ウズベキスタンは、遠く離れたシルクロードの住まいですが、気候や自然と調和しながら豊かに暮らす住まい、工夫は、普遍的な建築のあるべき姿を再認識させられます。
※床座(ゆかざ)とは、椅子やソファを使わず、フローリングや畳などの床に直接、あるいは座布団やクッションを敷いて直接座る生活様式・居住スタイルのことです。
参考:
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