
【大阪万博2025】
Nest for RebornとFLVが示した住まいの進化
2025年大阪・関西万博では、「健康」と「自然環境」という二つの視点から、未来の住宅のあり方を再考させる展示が数多く登場しました。
大阪ヘルスケアパビリオン「Nest for Reborn」では、PHRを活用して未来の健康状態を可視化し、「住まいが健康を支えるインフラへと進化する可能性」が提示されています。
一方、フューチャーライフヴィレッジ(FLV)は、自然素材や循環型エネルギーを取り入れた「環境と調和する暮らし」を提案しました。
これらの展示は、これからの住宅設計において重要なヒントと示唆を与えてくれる内容でした。
今回のブログでは、この二つの展示内容を取り上げ、未来の住宅づくりに活かせるポイントを詳しく解説していきます。
(1)大阪ヘルスケアパビリオン「Nest for Reborn」が示した「健康管理住宅」の未来
2025年大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn」では、来館者の身体情報をセンシングし、2050年頃の未来の自分を可視化する「リボーン体験ルート」が高い注目を集めていました。
この体験は単なるエンターテインメントではなく、個人の 「PHR(Personal Health Record)」を起点として、健康状態や将来の身体の変化を見つめ直すきっかけとなるものでした。
住宅の視点で捉えると、これは、「住まいもまた、ライフステージや身体の変化を見越して機能する“健康インフラ”になりうる」という可能性を示していると言えます。
これからの社会では、高齢化、核家族化、ライフスタイルの多様化、医療・介護負担の増大など、多くの変化が予想されます。
そのなかで「住まい × 健康管理 × 将来対応力」は、住宅を考えるうえで非常に重要なテーマになっていくでしょう。
ここでは、「Nest for Reborn」の展示内容を振り返りながら、“未来の住宅のヒント”として整理していきます。
■PHRを起点に未来の自分と出会う――リボーン体験ルート
もっとも印象的な展示が、来館者のデータをもとに未来の姿を提示する「リボーン体験ルート」でした。
入館時には専用アプリで登録を行い、RFIDタグを内蔵した「リボーンバンド」が配布されます。これは館内のすべての体験を紐づける“個人ID”として機能します。
●身体データの取得(カラダ測定ポッド)
来館者は小型の個室ブースに入り、
・肌
・髪
・歯
・心血管
・筋骨格
・ほか計7項目
といった身体情報を非接触で測定します。
取得したデータをもとに、「25年後のあなた」 に相当するアバターがAIによって生成され、2階の体験ゾーンで閲覧できる仕組みになっていました。
このアバターは単なる容姿の変化だけではなく、健康データに基づく未来の状態を表示するため、まさに「未来の自分を“見える化”する体験」 となっていました。
この体験は、健康維持のための行動変容を促すという点でも非常に意味があり、ご自身の「住まいの未来設計」を考えるうえで有益な内容と言えると感じました。
■住宅・都市の未来像に直結するその他の展示
リボーン体験以外にも、未来の住宅づくりに参考になる展示が複数ありました。
●ミライのヘルスケア
「細胞ケア研究所」では細胞老化に対する研究の未来像が示されていました。
また「ミライのアイケア」では、顔写真から将来の目の健康スコアを算出し、適したケアの可能性を提示する試みが行われていました。
●ミライの「食」と文化
PHRに基づいてパーソナライズされた「未来のヘルスケアフード」の提供も行われていました。
これは「食」を単なる栄養補給ではなく、住まいに組み込まれるべき「住宅=健康インフラの一部として捉える」発想につながっています。
未来の住宅では、
・健康状態に合わせたキッチンIoT
・PHRと連動した食事管理
・栄養最適化を支援する住空間
といった仕組みが実現する可能性があります。
■まとめ:住まいは「生活の器」から「健康プラットフォーム」へ
住宅は「健康を支える場所」へ進化します。
Nest for Reborn が示していたのは、単なる未来の住宅像ではありませんでした。
むしろ、住宅という存在そのものに対して、「住まいとは何をすべき場なのか」という根本的な問いを投げかけていたように思います。
未来の住まいは、これまでのように「家族の住むための箱」ではなく、
・家族の健康状態の見守り。
・状況に応じて環境を調整し、心身の改善まで支援する。
という、「能動的に健康を支えるプラットフォーム」 へと進化していく可能性があります。
PHRを中心に据えた体験展示は、住宅・都市・医療・福祉の領域をつなぐ大きな未来像を提案していたと言えるでしょう。
(2)「フューチャーライフヴィレッジ」に見る、自然とつながる次世代住宅のヒント
大阪・関西万博2025の「フューチャーライフヴィレッジ(FLV)」は、前段に紹介したハイテク主導の「Nest for Reborn」とは対照的に、「環境・自然素材・循環型社会」といった“ローテク×ネイチャー”の視点から未来の暮らしを再構築するパビリオンでした。
ここでは、単にテクノロジーを追加するのではなく、住まいの根本となる「空間」「素材」「自然環境との関係」を問い直す展示が中心となっていました。
その内容は、これからの住宅設計に多くの示唆を与えるものとなっていました。ここではその代表的なものを紹介します。
■自然と一体化する暮らし:FLVが提示した新しい住宅のかたち
FLVの空間は、建築と自然を接続するアイデアに満ちていました。
●森のような空間構成
「森に住む」ようなコンセプトで、半屋外空間や開放的な構造が連続し、
中庭・植栽・緑の壁などが建築に溶け込む**ように配置されています。
●自然の流れを建築へ取り込む設計
・風の通り道を設計
・光を柔らかく取り込む透過素材の屋根
・雨水を回収して再利用
・水の流れによる微気候の調整
これらは、自然環境を積極的に“設備化”する設計思想と言えるでしょう。
●建物と屋外の境界を曖昧にする
壁を半透明素材にしたり、屋根の一部を開放することで、「閉じた家」から「自然と対話する家」へと価値観を変換させています。
●解体・再利用が前提の構法
展示建築は、
・リサイクル材
・再生可能素材
・解体・再構築しやすい構造
を採用し、万博後も資源が無駄にならない「循環型建築」を実践しました。
■循環型デザイン:「家が“呼吸する」未来へ
FLVが示したのは、「環境配慮型設計」以上の発想となっています。
つまり、
・自然換気
・雨水の再利用
・植栽を活かした温熱調整
・土・木など自然素材の再評価
などです。これらの要素は、住宅そのものが“呼吸し、循環する”という概念につながり、未来の住宅の根本的なあり方を示していました。
都市の狭小住宅でも、小さな中庭、壁面緑化、バルコニーでの雨水循環、通風計画など、取り入れられる要素は多くあります。
敷地が小さくても「自然と循環する家」は実現可能という示唆を与えています。
■DNPのFLE展示:2050年に向けた「自然エネルギーが循環する暮らし」
FLVの一部である FLE(Future Life Experience)では、DNP(大日本印刷) が「2050年 自然エネルギー社会」をテーマにした展示を行いました。
展示は、次の4つの技術で構成されています。
①微生物発電
発電菌が有機物を分解するときに発生させる電子を取り出す技術。
「生物由来のエネルギー」という新しい発想。
②太陽光発電
進化した太陽電池・建材一体型パネルなど、住宅に自然に馴染む形へ進化。
③振動発電
歩行や機械振動といった身の回りの“微小な振動”を電力へ変換。
④ワイヤレス給電
マイクロ波などを使い、ケーブルなしで電力を送る技術。
これらを組み合わせることで、「自然エネルギーを地産地消しながら、住宅がエネルギーを生む」未来像を提示しています。
住まいが「エネルギーを消費する場所」から「エネルギーを生み出し、循環させる自立した存在」へ。
この転換は、災害時のレジリエンス向上や光熱費削減だけでなく、地域コミュニティ単位でのエネルギー循環にもつながります。
■まとめ:FLVは住まいの未来を再定義する「共創の実験場」
フューチャーライフヴィレッジ(FLV)は単なる展示ではなく、未来の暮らしを企業・研究者・来場者がともに創る「共創の場」として機能していました。
そこから見えてくる未来の住宅像は次のようにまとめられます。
・住まいは、けっして「閉じた箱」ではなく、「自然とつながる場」になりうる。
・住まいは、素材・構法からエネルギーまで、「循環を前提に設計される」もの。
・都市の狭小住宅でも「自然共生型住宅」の要素を取り込める。
・家がエネルギーを生産し、「地域の循環のハブ」となる。
・住まいが生活・社会・環境と「対話」する時代へ。
これらは、従来の間取りや住宅設計の常識では実現できない、これからの「新しい住宅の価値観」を示しています。
参考:
- 最新のトピックス
- 人気のトピックス








