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2025.07.11

「ペルーの住宅探訪」住宅市場と間取りから見える暮らしのかたち

「ペルーの住宅探訪」
住宅市場と間取りから見える暮らしのかたち

 

マチュピチュやナスカの地上絵など、謎と魅力にあふれるペルー。
けれど、そこで暮らす人々の“住まい”は、どれほど知られているでしょうか?
今回のブログでは、急成長するペルーの住宅市場の最新動向から、ペルー特有の多世帯住宅や地域ごとの建築様式、間取りの特徴に至るまで、リアルな住宅事情をわかりやすく解説します。
ペルーの経済背景や文化が反映された住環境を知ることで、観光以外の視点からこの国を深く理解できるほか、投資や移住を検討する際の参考にもなります。
家族の絆を大切にするペルーの暮らしぶりを覗き見しながら、旅行の楽しみも広がることでしょう。

(1)ペルーの住宅市場は? 現地のリアルな状況を読み解く

近年、ペルー経済は回復基調にあり、2024年のGDP成長率は3.3%、2025年には2.7~3.1%が見込まれています。
なかでも注目すべきは建設業で、GDPの約5.4%を占め、経済の原動力のひとつになっています。
こうした経済成長の波に乗って、住宅市場も活況を呈しています。
2025年現在、住宅価格は上昇傾向にあり、賃貸需要も拡大。政府による住宅取得支援策の強化も相まって、投資先としてもペルーの注目は高まっています。

前年の2024年は住宅市場が前年比で30%も成長し、4,900戸の新築住宅が供給され、販売された不動産ユニットは21,479戸にのぼりました。
これは、住宅ローンの条件改善や雇用の回復などが後押ししていると考えられています。2025年も引き続き7~8%の成長が見込まれ、不動産分野は経済の中でも重要なポジションを占めています。

■価格が高騰する首都リマの住宅事情

住宅需要が特に集中しているのが首都リマです。
都市圏の平均価格を見ると、アパートは1平方メートルあたりPEN 10,211(約42万円、前年比+1%)、戸建てはPEN 8,946(約37万円、前年比+3%)となっており、上昇が続いています。

首都リマ市全体で見ても、アパートはPEN 7,874(約32万円)とわずかに減少したものの、戸建て住宅はPEN 8,797(約35万円、+4%)と上昇が目立ちます。
特に人気の高いミラフローレス地区では、アパートがPEN 10,319(+2%)、戸建てはPEN 9,672(-2%)と、エリアによって価格の動きにはばらつきが見られます。

実際に不動産ポータルサイトで価格を調べてみると、リマのサン・イシドロ、ミラフローレス、ラ・モリーナなどでは、250~700㎡ほどの戸建てや高層アパートが6,000万円~2億円超で取引されています。
これだけ聞くと高額に感じられますが、東京のような大都市と比べるとやや安めです。ただし、日本の地方都市と比べると、同程度か場所によってはむしろ高く感じるエリアもあるのが実情です。

■高すぎる住宅価格、ペルー国民の現実

ここで気になるのが「現地の人にとって、家は買いやすいのか?」という点です。
ペルーの平均年収は約96万円。つまり、住宅価格は年収の10?30倍にもなる計算です。
日本よりもかなり住宅取得のハードルが高く、共働きは当たり前。場合によっては親族と一緒に住宅を購入したり、郊外や地方への移住、中古住宅を選ぶという選択肢も一般的です。
このような状況を受けて、政府も対策を進めています。たとえば、
Miviviendaプログラム:中間所得層向けに、低金利ローンや頭金補助を実施
Techo Propioプログラム:低所得層を対象に、建設費用の一部を政府が負担
Mivivienda Verde:エネルギー効率の高い住宅に対する補助金制度
などがあり、こうした支援制度によって、住宅ローンの利用者は増加しており、以前よりもマイホーム取得への道が開けつつあります。

ペルーでは都市化が進む中、中間層の拡大や政府の住宅支援策によって、住宅市場は今後さらに活性化すると見られています。
特に首都リマでは価格が上昇を続けていますが、地方都市や郊外では手頃な価格帯の住宅も増えており、多様なニーズに応える供給が期待されています。
経済成長にともない、住宅を取り巻く環境も変わっていくペルー。これからの動きに注目していきたいところですね。

(2)ペルーの住宅はどうなっている? 間取りの特徴を解説

ペルーの住宅は、その地域ごとの気候や風土、そして家族とのつながりを大切にする文化が色濃く反映された、とてもユニークな造りをしています。
ここでは「住宅の間取りや構造の特徴」について、実際の暮らしぶりに触れながら解説します。

■ペルーの家は“大家族”が基本

ペルーでは親や兄弟、時には親戚も一緒に暮らすことが多く、自然と家のつくりも広めに設計される傾向があります。
日本のような「核家族」を前提とした住宅とは異なり、世代を超えて共に暮らす“多世帯”の暮らしが日常です。

■建物のつくりは地域によってさまざま

ペルーは海岸、山岳、アマゾンといった多様な地形を持つ国。
気候や土地条件に合わせて、家の構造もさまざまに変化します。

アドベ(日干しレンガ)造り:
土と藁を混ぜて作った「アドベブロック」で建てられた家は、特に山岳地帯や農村地域で多く見られます。断熱性が高く、夏は涼しく冬は暖かいのが特徴です。

レンガ造りの住宅:
都市部、とくに首都リマでは焼きレンガを使った家が一般的。カラフルに塗装された正面とは対照的に、側面はレンガむき出しということも珍しくありません。

コンテナ住宅:
山間部の一部では、コンテナを活用した簡易住宅も見られます。これは日本の仮設住宅に近い雰囲気で、コストと機能性を重視したつくりです。

■ペルーの家、間取りの特徴はこんな感じ

中庭(パティオ)やテラスが暮らしの中心:
一年を通して寒暖差が少ない地域では、日当たりのいい中庭が間取りの中心に置かれます。洗濯、食事、憩いの場…と、まさに“家のハート”とも言える存在です。家族や近所の人との交流の場にもなっており、ペルーの温かな人間関係を感じられる場所でもあります。

玄関は“土足スタイル”:
日本のように靴を脱ぐ文化はなく、玄関を開けるとそのままリビングへ直行します。玄関スペースは最小限で、ドアひとつがあるだけというシンプルさです。

リビングが家の中心:
リビングは、家に入ってすぐの場所に設けられています。ソファやテレビ、家族写真が飾られ、家族団らんの場として機能しています。
空間を広く見せるために、壁一面に大きな鏡を設置する家も多く、これは社交的な文化の表れとも言えます。

キッチンは独立型が多い:
多くの家では、キッチンはリビングとは離れた個室にあります。
ドアがしっかり閉まるようになっていて、料理中の匂いや音が他の部屋に漏れないよう工夫されています。

ランドリールームの存在:
洗濯機はキッチンの奥、またはキッチン内に設置されていることが多く、家事動線を考えた機能的な配置になっています。
中にはお手伝いさんがいる家庭もあり、効率的な家事導線はその名残とも言えるかもしれません。

お風呂は水は冷水が基本:
ペルーの浴室は、シャワーとトイレが一体となったユニットバスが主流です。
浴槽はめったになく、基本的にはシャワーのみ。しかも、冷水がスタンダードなので、初めて体験する人には少し驚きかもしれません。

寝室にはバスルーム付きも:
家族それぞれに独立した寝室があり、中にはユニットバスがついている場合もあります。寝室は落ち着いた空間に仕上げられていて、プライバシーがしっかり確保されています。

屋上も“暮らしの場”として機能:
雨が少ない地域では、屋根は平らに造られています。この屋上は洗濯物を干したり、鉢植えを育てたり、ちょっとしたガーデンスペースとして使われるなど、生活の一部として有効活用されています。

ペルーの住宅には、家族や親しい人たちとの時間を大切にする文化が息づいています。
広めの間取りや中庭、家族の集まるリビングなど、そこには人とのつながりを大事にする習慣・文化が感じられます。
もしペルーを旅行する機会があれば、ぜひ住宅の様子や暮らしの工夫にも目を向けてみてください。
きっと、新たな驚きの発見があるはずです。

まとめ

ペルーの住宅は、家族や親族と共に暮らす多世帯文化や地域ごとの特色が色濃く反映されています。
経済成長に伴い住宅価格は上昇傾向にありますが、政府の支援策や地方の手頃な物件の増加により、多様なニーズに合った住まいも広がっています。
間取りは家族の絆を重視し、中庭やリビングを憩いの場として配置する傾向があります。地方ではアドベやレンガ造りの住宅、都市部ではコンテナハウスなど、さまざまな建築スタイルが共存しています。
こうしたペルーの住宅事情や暮らしの文化を理解することで、この国の経済背景や生活習慣、日本との違いについてより深く知ることができ、関心もさらに高まったことでしょう。

参考: