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2025.05.09

「ベトナムの住宅探訪」最新住宅動向とユニークな住宅デザイン

「ベトナムの住宅探訪」
最新住宅動向とユニークな住宅デザイン

 

東南アジアの経済成長国として注目を集めるベトナム。
活気ある東南アジアの都市として豊かな文化が魅力ですが、実際にどのような家で暮らしているのか、ご存知でしょうか?
「ベトナムの家って日本と何が違うの?」「どんな間取りが多いの?」と疑問に思う方も多いはずです。
今回のブログでは、ベトナムの住宅市場の最新動向や、一戸建て住宅の特徴的な間取り、そして実際の住まい方や暮らしの工夫など分かりやすく解説します。
旅行やビジネスでベトナムを訪れる予定のある方はもちろん、異文化の住環境に興味がある方にも参考になる内容となっています。

 

(1)2024年、回復が鮮明にーベトナム住宅市場の最新動向

ベトナムの住宅・不動産市場は、2021年から2023年にかけて停滞傾向にありましたが、2024年に入って回復基調が鮮明になってきました。

2024年第3四半期のハノイにおけるマンションの平均価格は、前年比22.3%と大きく上昇し、2,547米ドル/㎡(約37万円/㎡)に達しました。
この上昇率は、2023年第3四半期の9.5%を大きく上回り、2倍以上の伸びを示しています。また、同期間の販売戸数も、アパートが前年同期比で99%増加し、ヴィラやタウンハウスは110%増と大幅に拡大しました。

一方、ホーチミン市では平均アパート価格が3,266米ドル/㎡(約47万円/㎡)でほぼ横ばいでしたが、販売戸数は29%増加しました。
ですが、新規供給では前年同期比61%減と大きく減少しており、供給不足が鮮明になっています。
しかし、新たな土地価格基準の導入もあり、ホーチミン市の不動産市場も今後は回復が期待されています。

ベトナムでは、外国人でも条件付きでアパートを購入できることから、今後の有望な投資先として国内外で注目が高まっています。
さらにベトナム政府は金利の安定や住宅ローンの支援など、住宅購入を促進する政策を強化しています。

ベトナムの経済面を見ると、2024年第1四半期のGDP成長率は5.66%に達し(参考:日本は同時期-1.8%)、政府目標である年間6~6.5%成長の達成に向けて順調なスタートを切りました。
こうした経済の力強さを背景に、今後も住宅市場のさらなる回復と成長が期待されています。

ベトナムの人口増加率は年平均1.0%で、総人口の約70%が若年層という構成は、今後も経済成長にとって追い風となっています。
さらに、日本のような固定資産税が存在しないことも、不動産投資への魅力の一因です。今後も経済成長や都市化の進展に支えられ、住宅市場の発展が見込まれます。

ただし、都市部を中心に価格上昇や需要の高まりが続く一方、地域間や価格帯による二極化、手ごろな価格の住宅不足といった課題も抱えています。
2025年は都市化の進展や中間層の拡大、外国資本の流入などによって、ベトナムの住宅市場はさらなる成長が期待されます。

(2)間口が狭く、奥に長い!? ベトナムの一戸建て住宅の特徴

ベトナムの一戸建て住宅は、都市部と農村部でデザインや構造に違いはあるものの、共通して見られる大きな特徴があります。
それは、間口が狭く奥行きのある“縦長構造”であるというところです。

この縦長の構造は、ベトナムの税制度に由来します。
建物の間口(道路に面した幅)が広いほど固定資産税が高くなるため、敷地は細長く、建物は3~4階建ての縦長設計が一般的な住宅のあり方となっています。

都市部では、こうした建物は「チューブハウス(tube house)」と呼ばれ、鉄筋コンクリート造のモダンな外観が主流です。
また、ベトナムでは多世代が一緒に暮らす文化が根強く、1階はキッチンやダイニングなどの共有スペース、2階以降は寝室やプライベート空間として使われているようです。

間取り図参考:「1000戸の一戸建てが立ち並ぶ街「Vinhomes Riverside」のご紹介」より作成

それでは、各部屋・空間の特徴を見てみましょう。

  1. 玄関からリビングへ直結

ベトナムの住宅では、玄関扉を開けるとすぐに広いリビングが広がるレイアウトが一般的です。日本のような“玄関”や“廊下”はほとんどなく、土間のような空間もありません。

  1. 廊下がないシンプルな動線

廊下を設けず、リビングから各部屋へ直接アクセスできる設計が多く見られます。
その分、限られた床面積を有効に使い、より広々と感じられるのが特徴です。

  1. バスタブは基本なし

高温多湿な気候も影響し、ベトナムでは浴槽に浸かる習慣がほとんどなく、シャワーのみの設計が一般的です。

  1. 大きな窓とドアで風通し重視

自然換気を重視するため、窓やドアは大きめに設計されており、壁も比較的薄めです。
また、防犯や転落防止のため、ベランダや窓には鉄格子が設けられることが多くなっています。

  1. 押入れはなく、クローゼットが主流

日本のような“押入れ”は存在せず、クローゼット収納が基本です。
最近では、スペースや好みに合わせたオーダーメイド家具も人気です。

  1. トイレは複数設置が一般的

家族や来客の利便性を考え、2~3階建ての住宅ではトイレが2~3カ所に設けられることが一般的です。

■まとめ

ベトナムの住宅事情は、経済成長、若年層の多さ、税制度、さらには気候といった多様な要因を背景に大きく変化しています。
近年では住宅価格の上昇や供給不足といった課題を抱えつつも、都市化の進展や中間層の拡大、外国人投資の加速により、今後も住宅市場の拡大が期待されています。

間取りの面では、税制の影響による縦長の構造や、限られた空間を有効に活用する設計であり、気候に配慮した工夫や多世代で暮らすためのレイアウトなど、ベトナムならではの特徴が随所に見られます。

これらの住宅スタイルは、ベトナムの文化やライフスタイルを色濃く反映しており、日本とは異なる住環境を理解する上で重要なポイントと言えるでしょう。

参考: