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住宅設計海外の住宅間取り

2025.04.11

「サウジアラビアの住宅探訪」拡大する住宅市場と独特な間取りの特徴

「サウジアラビアの住宅探訪」
拡大する住宅市場と独特な間取りの特徴

 

サウジアラビアの住宅事情、あなたはどのくらい知っていますか?
近年、経済成長と「Vision 2030」のもと、不動産市場が活況を呈しているサウジアラビア。今回のブログでは、そんなサウジアラビアの住宅事情に焦点を当て、現在の不動産市場の現状から、独特の間取りの特徴までを徹底解説します。
この記事を読めば、サウジアラビアの住宅事情を詳しく理解できます。異文化への理解が深まり、海外の住宅に関心のある方にとって新たな発見があるはずです。
さあ、知られざるサウジアラビアの住宅事情を見ていきましょう。

(1)サウジアラビアの不動産市場の現状と成長予測

近年、サウジアラビアの住宅市場は、急速な都市化、若年層の人口増加、そして経済成長により大きな変革を遂げています。
2024年の不動産市場の規模は推定695億1,000万ドル(約10兆7,000億円)で、2029年には1,016億2,000万ドル(約15兆6,000億円)に拡大すると予測されています。
この市場の年平均成長率は約8%と見込まれています。

現在、サウジアラビア政府は「Vision 2030」に基づき住宅所有率を70%に引き上げることを目指し、不動産市場の活性化を図っています。
この取り組みの一環として、オンラインプラットフォーム「SAKANI」や「EJAR」などが導入されています。
これらプラットフォームは、住宅購入や賃貸契約の透明性を高め、消費者保護に寄与しています。
特に「SAKANI」は、住宅所有率の大幅な向上に貢献しています。

そして、首都リヤドをはじめとする主要都市では、住宅需要が急増しており、特に北部地域ではモダンでスタイリッシュな物件が人気となっています。
不動産価格は上昇傾向にありますが、政府の規制と支援プログラム「Vision 2030」により市場は健全に成長しています。

オフィス部門では、リヤドでの需要が際立っており、オフィス(グレードA)の賃料と稼働率が高水準を維持しています。
また、ジッダや東部州でも同様にオフィス賃料と稼働率が上昇しています。
一方、住宅部門は2022年は住宅取引件数が減少したものの、取引総額は微減に留まりました。
リヤド、ジッダ、そしてダンマームのヴィラ平均価格は上昇しており、特にダンマームでの価格上昇が顕著です。

サウジアラビアの不動産市場は、政府の積極的な開発政策と堅調な経済成長に支えられ、今後も成長を続けると予測されます。
「Vision 2030」のもと、さらなる発展が期待されるサウジアラビアの不動産市場は、今後も注目を集めることでしょう。

「Vision 2030」とは、サウジアラビアが経済と社会の改革を目指す長期計画であり、石油依存からの脱却、産業の多角化、社会の開放を目指しています。
この計画は、観光開発や技術投資を推進し、2030年までに先進経済大国となることを目指しています。

(2)サウジアラビアの住宅間取りの5つの特徴

サウジアラビアの住宅は、多様な特徴を持っています。
一般的に家庭は2階建ての住宅に住み、高い塀(2メートル以上)で囲まれています。
これにより、プライバシーが確保され、家族や訪問者の安全も守られています。
多くの家庭では門番やドライバーを雇っており、特に富裕層の住宅は非常に豪華です。

上図は、サウジアラビアにある「AL シャワン プライベート ヴィラ」を参考に作成した、1階の間取り図です。また、図には含まれていませんが、2階には寝室が6室、リビングルームが2室、バスルームが2室、サウナが2室あります。さらに、3階にはトレーニングルームが1室、寝室が1室、トイレが1室配置されています。

以下に、サウジアラビアの住宅間取りの特徴を5つご紹介します。

■広い居住空間

サウジアラビアは人口密度が低いため、住宅がとても広く設計されています。
一般的な住宅は300~400㎡と非常に大きく、日本の住宅と比べても、かなり広いのが特徴です。
単身者向けでも80~100㎡、ファミリー向けでは200~400㎡が標準です。

■多くの部屋数

広い住空間には、自然と多くの部屋が設けられます。
ファミリー向け住宅には通常、ベッドルームが3~5部屋、バスルームが3~4部屋あります。

■小さな窓とベランダの不在

サウジアラビアの夏は非常に暑く、日中の気温は50度近くに達します。そのため、窓は小さく設計されています。
また、リヤドは砂漠に囲まれているため、砂嵐が発生します。
このため、大きな窓やベランダは砂の侵入を避けるために少なく設計されています。

■ゲスト用の専用リビングルーム

イスラム文化に基づき、プライバシー保護や接客スタイルから、男性用と女性用のリビングルームが分かれていることが多いです。また、ゲスト用と家族用のリビングを別々に設けることも一般的です。

■独立したキッチン

キッチンは独立した部屋として設計され、小窓と換気扇が備えられています。また、冷蔵庫の横に冷凍庫を設置し、ウォーターサーバーも置かれることが一般的です。
さらに、ユーティリティルームには洗濯機や掃除道具を収納するスペースがあります。

サウジアラビアの住宅は、広々とした間取りと多目的スペースを特徴としており、文化的背景や気候条件に応じた設計が施されています。
特に家族重視やプライバシー保護への配慮が間取りにしっかりと反映されています。

まとめ

サウジアラビアの住宅市場は、政府の政策や経済成長により、今後も拡大が見込まれています。特に「Vision 2030」の影響で住宅所有率の向上や都市開発が進み、より多くの人々に住まいが提供される環境が整いつつあります。
また、住宅の間取りには広々とした空間設計やプライバシー保護を重視した特徴があり、気候や文化的背景に適応した工夫が施されています。
サウジアラビアの住宅事情を知ることで、異文化への理解が深まり、世界の住まいの多様性に気づくきっかけとなるでしょう。今後の市場の変化や新たな住宅トレンドにも注目していきたいところです。

参考: